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本の紹介「日本海の成立」
「日本海の成立 生物地理学からのアプローチ」西村三郎著、築地書館、1974年11月、ISBN4-8067-1083-0、1900円+税
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【中条武司 20041216】
●「日本海の成立」西村三郎著、築地書館
地理的に日本を日本たらしめているのは日本海の存在である。その成立をそこにすむ魚や無脊椎動物などを元にした生物地理学の視点から論じている。全地球的に見れば日本海という小さな海の成立が、全地球規模の問題と関わっているという視点がおもしろく、研究者の視点として必要だなと実感する。
いかんせん30年前の本なので、地質学的な面に現在は完全に否定されている学説を引用していたり想像力に富みすぎる面が多々ある。日本海研究の歴史的な一面を知るにはいいけど、内容を鵜呑みにするのはちょっと問題かも。
お薦め度:★★ 対象:日本海の研究史を知りたい人に
【六車恭子 20041217】
●「日本海の成立」西村三郎著、築地書館
かって海上交通が優勢であった頃、日本海は大陸からの先進文化を受け入れる玄関として大きな役割を果たしていた。日本海はたかだか新第三紀に出現した、以前は大陸の一部だったのだ。日本海盆の起源と進化というテーマは日本海に関する地球科学的問題点であり、わが国に海洋学という学問をはぐくみ育てる<母なる海>でもある。
かって日本海の生き物を研究していた著者が固有種の優先するその生物相の解析から、日本海が閉ざされた海であったとを証言する。巨大な淡水湖の時代を経て北方で大平洋に繋がる入り江となり、後に対馬暖流が北上する今のような日本海となったことを生物地理学的に展開して飽きさせない。現存する生きものたちが教えてくれる遥かなる海の物語りだ。
お薦め度:★★★★ 対象:夕焼けの空に心を奪われたことのある人
【和田岳 20041217】
●「日本海の成立」西村三郎著、築地書館
副題は、生物地理学からのアプローチ。つまり、日本海の成立の歴史を、現在日本海にすんでいる生物(主に魚)から考えてみようという本。著者があとがきで書いているように、内容はまるでSF。“自由な推理・想像の翼を大きくひろげ”て、大胆な話が展開します。
日本海はずっと今のままあったわけではなく、さまざまな歴史を経てきており、現在日本海にいる魚を調べればその歴史がわかるかもしれない! と考えるのは、とても楽しい。とまあ楽しく読めるけど、間違っても立証された話が書いてあると思わないこと。
お薦め度:★★ 対象:疑似科学を批判的に読める人(この本が疑似科学とは言わないけれど、読み手に必要な資質は同じようなもんでしょう)
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