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本の紹介「脳の本質」

「脳の本質 いかにしてヒトは知性を獲得するか」 乾敏郎・門脇加江子著、中公新書、2024年11月、ISBN978-4-12-102833-4、1000円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。

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【和田岳 20250214】【公開用】
●「脳の本質」 乾敏郎・門脇加江子著、中公新書

 とても大層なタイトルだけど、ある意味本当に脳の本質について教えてくれる。  ヘルムホルツは“私たちが見ているこの世界が、網膜像をもとに推論され作り上げられた世界”と言った。直接、外部世界を知ることができない脳が、限られた感覚情報から、ベイズ推定をフル稼働させて、外部世界を推定。運動の結果からさらに推定。と頑張る。神経伝達の遅れから“現在”が分からない中で、リアルタイムでの対応を求められる苦労。頭の中には苦労人がいるイメージ。
 脳のさまざまな研究が、新書にコンパクトにまとめられているのはお得だけど、ちょっと盛り込み過ぎ。とくに第6章は、知識や言語の獲得、モチベーションの源など、いろんな話題が多すぎて、理解が追いつかない。
 第7章の「意識とはなにか」は期待して読んでも明確な答えはない。後付けの自己主体感など、一般常識とはかけ離れていて面白い。

 お薦め度:★★★  対象:脳の機能、意識・感情の生まれるメカニズムが気になる人
【犬伏麻美子 20250214】
●「脳の本質」 乾敏郎・門脇加江子著、中公新書

 本書は、認知神経科学と臨床発達心理学が専門の二人が研究分野をまたいで、脳がもつさまざまな機能に関して、歴史的背景もふまえて、脳科学の最新の知見が紹介され、脳機能の本質は「予測」だと述べています。また、一般の人たちにも脳の仕組みができるだけわかりやすように、第1章を省いた7章までのすべての章のおわりに「まとめ」が書かれていたり、説明に図を載せていたり、章にまつわるコラムも掲載されていたりと工夫されています。
 第1章は、脳の本質を考えるうえで大事な科学的概念とその歴史的背景の紹介。第2章は脳がどのようにして環境からの情報を処理し、どのように環境に働きかけるか。第3章は感情はどこから生まれ、どのように認知されているのか。第4章は人間がもつ基本機能がどのように発達するのか。第5章は記憶をつかさどる海馬の機能について。第6章は脳の仕組みを基礎に、より高次の脳機能について。第7章は脳はどのように私たちに意識をもたらしているのかについて書かれています。
 人間とはいったい何なんでしょうか。

 お薦め度:★★★  対象:人間の脳の仕組みについて知りたい人たちへ
【西村寿雄 20250209】
●「脳の本質」 乾敏郎・門脇加江子著、中公新書

 副題に「いかにしてヒトは知性を獲得するか」とある。具体的には見えない「脳の本質」について、外国の学者も交えていろいろな学者の考えが述べられている。出てくる記述にも「○○仮説にによれば・・」が多く、少々読みにくい。ただ、脳についてここまでいろいろと研究されていることには驚かされる。近年のAI技術の発展にもこれらの研究が生かされているとか、興味深い研究分野である。

 お薦め度:★★★  対象:脳科学に興味深い人
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