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本の紹介「温暖化で日本の海に何が起こるのか」

「温暖化で日本の海に何が起こるのか 水面下で変わりゆく海の生態系」山本智之著、講談社ブルーバックス、2020年8月、ISBN978-4-06-520676-8、1100円+税

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【西村寿雄 20201019】【公開用】
●「温暖化で日本の海に何が起こるのか」山本智之著、講談社ブルーバックス

 日本は古来から豊かな海に囲まれて各魚、昆布と言った食文化が季節に応じて生まれてきた。ところが、その食文化に異変が起きかけているという。その原因の一つは、地球温暖化による海水の温度上昇がある。サンゴの白化現象が起きている。海水温度が1度上がると魚たちは微妙に棲み場所、産卵場所を変えてくる。もう一つは、二酸化炭素を海水に取り込む量が多くなってきて海水に酸性化が進んでいるという。くわしくは本を読んでもらうとして、だんだんと春のイカナゴ漁や秋のサンマ漁、日本のサケ、アワビや、カキ、ノリも減産に追い込まれかけているとか。おいしい寿司ダネもさびしくなるか。

 お薦め度:★★★  対象:これからの漁業に関心のある人
【柴田可奈子 20202010】
●「温暖化で日本の海に何が起こるのか」山本智之著、講談社ブルーバックス

 日本近海の美味しい旬の海産物がなくなっていくの! 読み進めると、次々私の好きなものが危ない。温暖化、ずっと前から言われている。酸性化、これもずっと前から聞いてる。それぞれの美味しい海産物?生態を丁寧に説明してくれるのはいいが、じゃあ一体どうすれば日本近海の環境は守られるの? はっきりとした答えはないのかも知れないが、ちょっとでもヒントが欲しかった。ワカメが唯一の救いか…。スッキリしない読後感。

 お薦め度:★★★  対象:今のうちに美味しい日本近海海産物を食べておきたい人向け
【西本由佳 20201025】
●「温暖化で日本の海に何が起こるのか」山本智之著、講談社ブルーバックス

 地球温暖化が進むなか、海はその進行を緩和してくれるものとして期待されていた。しかし、海水温の上昇によって海の生きものにも異変は生じてきていて、また、二酸化炭素を吸収する結果として、海水の酸性化が進み、そのことも影響を与えることがわかってきた。海水温の上昇では、サンゴの白化やオニヒトデの食い荒らしがよく知られているが、回遊魚の動きの変化や、沿岸の生物にとっても高温に弱い成長段階で影響を受けることで、日本は適切な生息地ではなくなりつつある。また酸性化は、プランクトンの種構成や貝の殻の形成、幼生の生存率などに影響を与えている。二酸化炭素の増加や地球温暖化が遠い国の問題ではなく、自分たちの身近にまで迫ってきている問題なのだと、たくさんの事例をもとに示してくれる。ただ、自然に興味のない人に訴えるためなのか、延々とすしネタが列挙される。ここまでしないと関心のない人は心が動かないものなのだろうか、と思うと少し疲れた。

 お薦め度:★★★  対象:地球温暖化を人ごとだと思っている人に
【萩野哲 20201014】
●「温暖化で日本の海に何が起こるのか」山本智之著、講談社ブルーバックス

 水面下で変わりゆく海の生態系」山本智之著、講談社ブルーバックス、2020年8月、ISBN978-4-06-520676-8、1100円+税 本書の内容はタイトル通りである。最近の海洋環境と水生生物の変化から、今後の変化予想を紹介している。北方系の生物が減少ないし北方にシフトすることは予想できるだろうが、影響はそれにとどまらず、貝毒やシガテラが増える可能性にも言及している。本書で扱う生物の生活史や分布について概要をまとめて紹介しているのは役に立つだろう[ただし、間違いもあるので注意が必要(例:本当はアイゴの胸鰭には毒棘がない.p.253)]。取材してきました感が前面に出て、ではどうしたらよいのかの提言が皆無なのが大変残念。各章の図を、連番は通しなのに「図-XX」や「写真-XX」と変えているのが気持ち悪い。

 お薦め度:★★  対象:うーん
【六車恭子 20201030】
●「温暖化で日本の海に何が起こるのか」山本智之著、講談社ブルーバックス

 海水温の上昇にともなう海の異変はすでに国内各地で報告されており、その事例が詳細に語られた一冊。
 サンゴ礁の衰退は生物多様性の危機に直結する大問題だ。2070年代には温暖化と海の酸性化で全滅する可能性がある!
 また身近な事例として食卓から私たちは知る。春のイカナゴの不漁、夏には小さくなったマアナゴ、秋は小型化するサンマ、回遊ルートを遮断された日本のサケが消える?、冬の「海のミルク、カキ」、「危ないフグ」。日本沿岸で進む海洋酸性化を成長異常の証拠としてマガキは殻が形成できない個体が、ウバガイの稚貝も貝殻の形成できない事例が報告されている。
 書き手はかっては朝日新聞社の記者として科学報道に携わってきただけに話題はつきない。
 我々の暮らしから排出されたエネルギーの90パーセント以上を海洋が吸収しているのだ!日本近海の水温の上昇は加速するだろう。豊かな海を取り戻す一歩を今、この瞬間から始めねばならない、そう、促してくれる一冊。

 お薦め度:★★★★  対象:未来を夢見る人
【和田岳 20201028】
●「温暖化で日本の海に何が起こるのか」山本智之著、講談社ブルーバックス

 地球温暖化自体とそれに伴う海洋酸性化によって、地球の海洋生態系は大きく変わることが懸念されている。日本の海を舞台に、すでに始まっている変化を次々と紹介していく。  沖縄のサンゴ礁で白化し、オニヒトデに食われ、病気がひろがり、幼生の定着にも懸念がある。こうした事例が次々出てくる。サワラやブリから季節感がなくなり産地が変わり。イカナゴは捕れなくなり。サンマは小型化し冬が旬になり。サケには回遊ルート遮断の危機が迫る。未来の寿司屋では、マグロもホタテもアワビも食べられず。和食に必要なコンブ、ノリ、ワカメにも大きな危機が迫っている。海の幸を楽しむ日本人にはダメージが大きそう。  陸上以上に影響が明らかになってきている海洋生態系の危機はよく分かる。個々の事例もとても興味深い。ただ、ダラダラと事例が紹介されるだけで、構成も判りにくい。

 お薦め度:★★★  対象:地球温暖化が海洋生態系に与える影響をいろいろ知りたければ
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