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本の紹介「温泉と地球科学」
「温泉と地球科学 温泉を通して読み解く地球の営み」大沢信二・西村進編、ナカニシヤ出版、2016年9月、ISBN978-4-77951094-6、2000円+税
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【西村寿雄 20170219】【公開用】
●「温泉と地球科学」大沢信二・西村進編、ナカニシヤ出版
近くに火山がない場所でも各地に温泉は出ている。この本はそうした非火山地帯で温泉が出ている根源を何人かの専門家が論じている。各温泉の熱水成分同位体比を調べて温泉の元を論じるなど温泉についてのかなり専門的な本である。「火山に湧く冷たい炭酸泉」「沈み込むプレートに辿り着く温泉」「太古の海洋環境の手がかりになる湯ノ花」「有馬温泉の金泉」等がある。西日本にある中央構造線ぞいの温泉は変成岩から熱水が絞り出され変成岩の上昇と共にわき出ているとか,有馬の金泉(多様な温泉成分を含む)や紀伊半島の温泉は酸性の貫入岩脈に沿ってアルカリ性の高温水が出ているとか,長年の研究成果が興味深く論じられている。
お薦め度:★★★ 対象:温泉に関心を持つ地球科学研究者・学生
【中条武司 20170421】
●「温泉と地球科学」大沢信二・西村進編、ナカニシヤ出版
温泉の効能や泉質にふれるガイドブックは数あれど、なぜそのような泉質か、なぜそこに温泉があるのかを触れている本は数少ない。編者も含む7人の著者が、温泉を地球内部からのメッセージを読み解くように、様々な謎を解き明かす。火山もない有馬温泉はなぜ熱いお湯が湧くのか、地下数十キロのマントルと温泉の関係、温泉の湯ノ花と地球初期の生命との関わり、泡が沸き立つ炭酸泉の二酸化炭素はどこから来るのかなど、興味深い内容が書かれている。ただこの手の複数著者の本にありがちな、章によっての完成度が(かなり)ばらつくのが残念。とはいえ、読んでから温泉に入ると、ちょっと温泉と地球との関わりを感じられるかも。
お薦め度:★★ 対象:温泉にはいって地球のダイナミックさを感じたい人
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