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本の紹介「オサムシの春夏秋冬」

「オサムシの春夏秋冬 生活史の進化と種多様性」曽田貞滋著、京都大学学術出版会、ISBN4-87698-308-9、2100円+税


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【河上康子 20030220】【公開用】
●「オサムシの春夏秋冬」曽田貞滋著、京都大学学術出版会

 オサムシを研究材料として、その生活史進化と種多様性との関係を、20年にわたり探求してきた著者の研究史。第一章はまず最も身近であった京都盆地の2種のオサムシの生活史調査の記録にはじまり、春繁殖・秋繁殖の分化から考察できる、地理的な適応への変異、すなわち高山帯・寒冷地でのオサムシの生活史研究へと進む。さらに、生活史の多様性がもたらす系統進化への可能性を求め、世界中のオサムシ族の生活史、遺伝子解析から得られる系統樹と生活史との比較検討へと幅広く展開する。ガラパゴスへ行かなくても、身近なオサムシでも進化の研究はできると語る著者のおもいに深く共感できる。
 
 お薦め度:★★★  対象:昆虫の生態や進化に興味のある昆虫好きのひと

【瀧端真理子 20030218】
●「オサムシの春夏秋冬」曽田貞滋著、京都大学学術出版会

 本書はオサムシ亜族の進化現象を解明する道筋を、生活史研究・形態研究・分子系統学を用いながら丁寧に説明してゆく。オサムシ亜族は繁殖・越冬の季節と幼虫食性から6通りの生活史型に分けられる。こうした複数の生活史型への分化は、異なる生活史型の種の共存の機会を多くする。筆者はタクソン・パルス仮説(アーウィン)や、休眠性の進化系列から考えた仮説(パールマン)を取り上げ、熱帯から温帯へと分布を拡げていった歩行虫の進化史を説明する。また種間交雑・戻し交配の研究成果と、ミトコンドリアDNA・核DNA分析の併用によってタイプスイッチング説を否定している。分からないことの多くを残しながら、オサムシという日本にいる身近な素材でも、種多様性の維持機構と生活史進化の研究が可能なことを静かに語る、地味で濃厚な1冊。
 
 お薦め度:★★★  対象:種多様性と進化に興味を持つ辛抱強い人

【和田岳 20020221】
●「オサムシの春夏秋冬」曽田貞滋著、京都大学学術出版会

 オサムシを題材に、タイトル通り生活史の進化についての本。著者のオサムシ研究史という側面が強い。
 京都、信州とさまざまな場所で行なったオサムシの生活史の違いの研究からはじまり、世界のオサムシの生活史の変異や、分子系統の結果に基づく生活史の進化についての考え方が紹介される。最後の章では、日本のオオオサムシ亜属を題材に、種分化の問題が検討される。
 オサムシや生活史の進化に興味のある人には興味のある内容だろうが、そうでないなら、読み通すのはつらいかもしれない。第2章辺りで挫折しかかったら、第5章にとぶことをお薦めする。
 
 お薦め度:★★★  対象:オサムシが好きな人、または昆虫の生活史に興味のある人

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