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本の紹介「泳ぐイノシシの時代」

「泳ぐイノシシの時代 なぜ、イノシシは周辺の島に渡るのか?」高橋春成著、サンライズ出版、2017年2月、ISBN978-4-88325-610-5、1800円+税


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【和田岳 20170421】【公開用】
●「泳ぐイノシシの時代」高橋春成著、サンライズ出版

 タイトル通り、近年イノシシが泳いで、島に渡っているケースが多発していることを紹介した一冊。かと思いきや、近世から現代にいたるイノシシの分布の変遷や、人との関わりの変化にまで話が及ぶ。イノシシと人の歴史が判る一冊。
 第1章はイントロ。1980年代以降、イノシシが泳いで島に渡る事例が多発していて、農業被害や生活被害を起こしていることをざっと説明。そして、第2章では、琵琶湖、瀬戸内海、宇和海、九州、南西諸島と日本各地で、イノシシが泳ぎ、島に渡った事例を次々と紹介。第3章では話は世界に及ぶ。第4章では。江戸時代、明治・大正時代、現代のイノシシの分布の比較からはじまって、生息地の拡大の要因として、温暖化、土地利用の変化、養殖イノシシ・イノブタの問題、狩猟や駆除の影響など人とイノシシの関わりの変化が語られる。
 現代の獣害問題を考える上で、とても勉強になる本。

 お薦め度:★★★  対象:イノシシあるいは獣害問題に興味があれば
【萩野哲 20170417】
●「泳ぐイノシシの時代」高橋春成著、サンライズ出版

 泳いでいるイノシシの写真満載で、海外も含めていろんな場所で海を渡ったイノシシの記録が多数語られている。問題は海を渡るイノシシが最近になって多くなっている状況である。本書を読んだ限りでは、明快な答えはなかったように感じたが、想像するに、最近イノシシの個体数が増加し、海を渡るイノシシの姿が目撃される機会も増えたことによるのではないか? 何も昔は海を渡らなかったことではないのではないか?と思った。最初は脅かされたり、生息密度が増え過ぎて泳いでいたが、そのうち泳ぐのが好きになり、餌もあるし・・・。大昔にこうやって海を渡るイノシシのような生物がクジラに進化したのでは?と夢想してしまった。

 お薦め度:★★  対象:イノシシに大変興味がある人
【森住奈穂 20170420】
●「泳ぐイノシシの時代」高橋春成著、サンライズ出版

 イノシシは泳げるらしい。泳いで島に渡り、生息域を広げているらしい。そのことを取り上げ、文章にまとめたものは今までなかったらしい。画期的な本だ!と思ったけれど、まだよく分からないことが多いみたいで、ちょっと消化不良。タイトルにある通り、現代のイノシシが泳ぐ、泳がねばならない理由は、暖冬化と過疎化によって生息地域、生息数が拡大しているから。食糧を求め新天地を目指したり、猟や駆除から逃れるために水の中へ猪突猛進。犬かきならぬシシかきで泳ぐ。けっこう早いらしい。距離は20km(ヒゲイノシシは45kmも!)は泳げるらしい。イノシシは何でも食べるので、新天地に上陸した場合、農業被害のみならず生態系への影響も甚大だ。新たなイノシシ観を啓発し、注意や対応策を練るべき時代なのだ。

 お薦め度:★★★  対象:イノシシが泳ぐって知ってる?と話したいひと
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