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本の紹介「パンダはどうしてパンダになったのか?」

「パンダはどうしてパンダになったのか?」方盛国・王?他著、技術評論社、2023年6月、ISBN978-4-2971-3533-1、1400円+税


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【冨永則子 20240411】
●「パンダはどうしてパンダになったのか?」方盛国・王?他著、技術評論社

 食肉目クマ科に分類され、元々は肉食だったパンダが、どうして笹や竹を主食とするようになったのか? 何度も絶滅の危機を乗り越え、今の姿になったパンダの長い進化の旅を追っていく。パンダの祖先とされる“始パンダ”は、キツネほどの大きさで、サーベルタイガーなみの狩りの能力を持っていたらしい。ぽてっとした今の姿からは想像もできない。
 氷河期に多くの生き物たちが絶滅していく中、肉食をやめ、笹や竹、タケノコをかじりだした“始パンダ”は生き残ることができた。でも、それまで肉食だったのに、植物、しかも、笹や竹という特定の植物をなぜ食べようとしたんだろう? タケノコは人間も茹でて食べるから、食べようとした気持ちが分からなくもないが…。肉食から植物食に進化したことで絶滅から逃れられたことは述べられているが、結局、なぜ笹や竹だったのか?には触れられていない。小さい体のほうが生命を維持するのにコンパクトで良さそうに思うが、体を大きくし、しかも植物食にかわることで絶滅から逃れられたなんて…。進化って不思議だなぁ?

 お薦め度:★★★  対象:パンダ!かわいい!!って思ってる人に、休日のわるものさんに教えてあげたい
【西村寿雄 20240424】
●「パンダはどうしてパンダになったのか?」方盛国・王?他著、技術評論社

 パンダはどうして熊なのに笹や竹を食べるようになったのか。パンダはもともと肉食動物だったという。パンダは7-800万年前頃には棲んでいたようだ。中国四川省近くの山中で生れた中国固有種で「始パンダ」と言われていた。体は薄黒く今の熊に似ていて肉食動物だった。約300万年前頃に寒波が訪れ獲物の動物が激減した。食べ物に困った始パンダは反芻機能を備えてササやタケノコに食を変えたという。今のパンダが竹を食べるにはそんな歴史がかくされていた。パンダは「動物界の生きた化石」ともいわれている。イラストは大きく見やすい。

 お薦め度:★★★  対象:パンダに興味ある子どもから大人
【森住奈穂 20240426】
●「パンダはどうしてパンダになったのか?」方盛国・王?他著、技術評論社

 もともと肉食動物だったパンダが、どうして笹や竹を食べるようになったのか。気候変動が大きく関係していたようだけど、この本では「一発逆転」を選択して「仙人のような菜食主義者」になったとの説明。よく分からない。ただ、現代のパンダに至るまでの間には、体形や食性の変化に応じて4段階があること、現代のパンダは800万年を生き残ったとても貴重な動物なのだということはよく分かる。中国の固有種として、絶滅の危機に瀕する野生生物のシンボルとして、大切に守られるべき存在のパンダだけど、人間の思想と結び付けての賛美には違和感を感じてしまった。

 お薦め度:★★  対象:パンダの進化に興味があるひと
【和田岳 20240424】
●「パンダはどうしてパンダになったのか?」方盛国・王?他著、技術評論社

 中国奥地にのみに生息し、推定2000頭にも満たないジャイアントパンダ。その進化の歴史がたどられる。
 数100万年前、キツネ大の肉食動物だった始パンダ。それが氷期を境に、ピグミージャイアントパンダに入れ替わり、70万〜50万年前にはアイルロポダ・バコーニという巨大ジャイアントパンダが現れた。この間に、肉食性から草竹食になり、同時に体が大型化していった。一番反映した時代、アイルロポダ・バコーニは黄河流域と長江流域に広がっていたという。しかし、約20万年前、再び氷期が訪れ、アイルロポダ・バコーニの大部分は絶滅し、秦嶺山系の個体群だけが生き残り、それが現在のジャイアントパンダに連なると考えられている。
 氷期の絡んだジャイアントパンダの系統進化と分布の変化は面白い。が、進化の説明が気になる。曰く「急速な進化で新しい生存環境に適応するために自らを変化させたのです」。自らの意志で進化したかのような説明はやめてほしい。

 お薦め度:★★  対象:ジャイアントパンダの系統進化を知りたい人
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