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本の紹介「魚の自然誌」

「魚の自然誌」ヘレン・スケールズ著、築地書館、2020年1月、ISBN978-4-8067-1594-8、2900円+税

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【森住奈穂 20200827】【公開用】
●「魚の自然誌」ヘレン・スケールズ著、築地書館

 魚と言ってもひとくくりに語ることはできない。色も形も生き方も、液体の世界で生活するための独特な適応を遂げている。「魚の生活を見て回る水中の旅になる」とプロローグにある通り、そんな独創的な魚たちの生態を筆者と共に観察しているような気分になれる本書。例えば、魚が出すさまざまな音やその仕組みについて書かれた章を読んでいると、自分も水の中に入って賑やかな音を聴いているような気分に。ニシンはオナラでコミュニケーションをとっているらしい!紫外線ライトを使って覗いた夜のフィジーの海中の様子はとても幻想的。各章終わりに民話が採録されていたり、ところどころに現れる魚のイラストなど癒し要素も満点。300頁余りの最後まで、興味深く読むことができる。

 お薦め度:★★★★  対象:水辺に立つとつい魚の姿を探してしまうひと
【萩野哲 20200708】
●「魚の自然誌」ヘレン・スケールズ著、築地書館

 プロローグで著者の自己紹介、第1章で魚の研究史、第2章で魚の系統分類、第3〜10章で魚の色彩、発光、群れ、摂餌、毒、進化、発音および思考力をそれぞれ取り上げている。太い本であるものの、自分の経験に基づいて派生的に記述しており、平易な文章で適度な脱線もあり、非科学的な内容(ゾンビなど)も取り上げており、読みやすい。個人的には、1554年に描かれたウツボの絵(36ページ)の精密さ、ビクトリア湖のシクリッドの絶滅がナイルパーチの直接的影響ではなかった(間接的影響ではあったけれど)こと、オウゴンニジギンポの持つ思わぬ強い毒などに興味が引かれた。気になるところとしては、訳者あとがきの言い訳にもかかわらず魚名の翻訳が分かりにくい事例が多く、せめて原著の英名や学名が併記されていたら、と思った。

 お薦め度:★★★  対象:魚をより深く知りたい人
【和田岳 20210623】
●「魚の自然誌」ヘレン・スケールズ著、築地書館

 魚の研究者でありサイエンスライターであり、なにより魚大好きな著者が、魚のあれやこれやを一杯詰め込んだ一冊。
 魚類研究の事始めからはじまり、おもな魚のグループ紹介。紫外線反射で見た魚の模様。ルシフェリンや共生バクテリアで発行する魚。肝臓に貯めたエネルギーで海の沙漠を越えていくホオジロザメ。海藻農園をつくるスズメダイ。毒を持つ魚は、全3万種の内、3000種近くにも及ぶ。交尾していた板皮類。人が知らなかっただけで、驚くほどお喋りな魚たち。人が気付いてなかっただけで、驚くほど知的な魚たち。
 次から次へと魚についての驚きが登場して、魚についての認識、水中の世界についての認識が大きく変わる。

 お薦め度:★★★★  対象:魚に詳しい人でも、魚のことを知らない人でも、魚について驚きたければ
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