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本の紹介「海洋生命5億年史 サメ帝国の逆襲」

「海洋生命5億年史 サメ帝国の逆襲」土屋健著、文藝春秋、2018年7月、ISBN978-4-16-390874-8、1500円+税

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【和田岳 20190423】【公開用】
●「海洋生命5億年史 サメ帝国の逆襲」土屋健著、文藝春秋

 古生代から新生代まで、生物の覇者の歴史を紹介する一冊。見開きの左端に、常にいつの時代の話をしているのか示してくれるので、とても判りやすい。名前のでてくるほぼすべての種についてのカラーの復元画が添えられていて、話をとてもイメージしやすい。ただ、不充分な情報に基づいて強引に描かれた復元画も多いので、復元画を鵜呑みにせずに本当に確実なのはどの部分なのかを確認した方がよさそう。
 カンブリア紀のアノマロカリス類からはじまって、三葉虫、ウミサソリ、そしてデボン紀の板皮類、石炭紀のサメ類。三畳紀〜ジュラ紀の魚竜とクビナガ竜、そして白亜紀の巨大なサメ類とモササウルス。新生代のクジラとメガロドン。次々と覇者が入れかわる中で、なぜか生き残り続けるサメ類は、確かにすごい。

 お薦め度:★★★  対象:海の動物が好きな人、海の覇者という言葉に惹かれる人
【萩野哲 20190410】
●「海洋生命5億年史 サメ帝国の逆襲」土屋健著、文藝春秋

 約5億年前の海に、硬い殻や棘などの防御のための武装をした動物が出現した。これは強力な捕食者の出現を意味する。最初の頂点に君臨する捕食者はアノマロカリス。しかし、彼らの天下は長続きせず、より大型化したウミサソリ類、頭足類が続いた。これらを脊椎動物が凌駕するためには、顎の獲得と更なる大型化、および武器の獲得が必要であった。その後の海の王者となった板皮類(甲冑魚)、軟骨魚類、様々な爬虫類や哺乳類の、進化の試行錯誤ともいえる変遷を、かなり想像たくましかな?と思われる豊富な図を一覧していくのは楽しい。

 お薦め度:★★★  対象:恐竜が好きな人(たぶん海中のサメ帝国についても興味を持って読めるだろう)
【六車恭子 20190426】
●「海洋生命5億年史 サメ帝国の逆襲」土屋健著、文藝春秋

 忘れられた「もう一つの生命史」、海の生命の物語がリアルで美しい図譜で堪能できる一冊。この地球という惑星が誕生して46億年、ようやくその神秘のベ一ルがはがされた。
 生き抜くために彼らが自らの身体をデザインし、目の誕生で弾みがかかる。防御用のウロコを得て、巨大化の道をたどる。オドロオドロしいそのデザインも全うな進化の王道だったのだろいか。
 ここに登場する生き物たちはこの惑星をはるか昔に退場し、わずかに遺された遺物から、物語を構築して行く。生身の生存競争をロングの視線が得られるので、すこし心の安らぎがあるのだろうか。しかし滅びの歴史は我々のいまの危うさをしらしめてくれるのだろう。

 お薦め度:★★★  対象:生き物のデザインに興味のある方
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