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本の紹介「生物と無生物のあいだ」
「生物と無生物のあいだ」福岡伸一著 講談社現代新書、2007年5月、ISBN978-4-06-149891-4、740円
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【太田行二 20090912】
●「生物と無生物のあいだ」福岡伸一著 講談社現代新書
「原子はなぜそんなに小さいのか?」と作者は自問する。そして、次のように自答する。どんな時にも、逆行するものが生じ、はみ出すものが生じるが、全体の規模が大きいと、誤差として、全体の流れは変わらないように「振舞える」。結局、生物が原子に比べて余りにも大きいことで、現状の機能が維持されて、形質がそのままに保持されているように見えているだけだと。このことを、天文学的数字と言わずに、「生物学的数字」と言いたいそうだ。また、分子生物学的に、何らかの遺伝子が欠落した筈のマウスを育ててみたら、健常なマウスに育っているのはなぜかと問う。生きている細胞は、欠落を補完するようだ。バックアップシステムを用意しているようだ。あるいは、他のバイパスで代用したり、似たようなピースを作って埋め合わせをする。しかし、人間が作った人工的な物質に対しての準備までは出来ていないらしい。公害に関しても、何とか誤差で済ませられることを祈るばかりだ。
お薦め度:★★★★ 対象:生命について考えている人
【釋知恵子 20100225】
●「生物と無生物のあいだ」福岡伸一著 講談社現代新書
帯には著名な作家達の賞賛の声。期待を膨らまして読んだので、ちょっと残念な印象。生物学の歴史、分子生物学(というのかしら)、そして著者の研究を、非常に詩的・文学的な表現で書いた本書は、確かに、こういった本の読者層を広げたのかもしれないが、詩的な文章が並びすぎるとわかりやすいというものでもないなあと思った。理解をさせようと思ったら、もう少し図もほしいし、ダイレクトに書いてほしい。あまり夢中になれず、休み休み読んだので、さらに、理解と感動がうまれなかったのかも。
お薦め度:★ 対象:ベストセラーを読んでみようかなと思った人に
【和田岳 20091216】
●「生物と無生物のあいだ」福岡伸一著 講談社現代新書
出版されて以来、ものすごく売れ続けている本。プロローグによると、「「動的平衡」論をもとに、生物を無生物から区別するものは何かを、私たちの生命観の変遷とともに考察したのが本書である」らしいのだが、そうかなぁ。
最初の11章は、DNAが遺伝情報を担っていること、DNAの二重らせん構造、PCR、同位元素をトレーサーとして使う技術など、エポックメイキングな出来事を中心に分子生物学の歴史を紹介。発見にいたったエピソードが中心で、科学的な解説は控えめ。合間に、著者が見たアメリカの紹介と、研究者世界の楽屋話。第12章以降では、著者自身の研究、細胞膜の動態に大きな役割を担うGP2探索の経過が紹介される。肝心の生物と無生物の違いは何かという問いには答えていない。
「動的平衡」という語が出てくるが、生物が動的な平衡状態にあることは別に目新しくない。ただ著者が使っている「動的平衡」という語は一般的な意味合いとは少し違うらしい違うらしいのだが、著者は少なくともこの本では、自身の考える「動的平衡」をきちんと説明していない。それを知りたければ続編を読めと言うことか?
お薦め度:★ 対象:生物学についてほとんど学んでこなかった人
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