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本の紹介「<正義>の生物学」
「<正義>の生物学 トキやパンダを絶滅から守るべきか」山田俊弘著、講談社、2020年6月、ISBN978-4-06-519090-6、2200円+税
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【萩野哲 20201014】【公開用】
●「<正義>の生物学」山田俊弘著、講談社
生物の保全はおこなうべきことなのだろうか?もしおこなうべきだとするならば、その理由はどこにあるのだろうか?100万種以上の動植物が絶滅の危機に瀕している現在、手遅れになる前に考えてみる(生物を保全するのが当たり前だ、という前提に疑問を抱いた場合、それに対する回答を明確にする)のが本書の趣旨である。どうしてトキやパンダを保護する必要があるのか?人間のためなのか?生態系のためなのか?弱肉強食に関するジャイアンの誤りや周辺情報(E/MSY値、社会ダーウィニズムやウィルソンの考え方)をながめながらじっくり考えると、正義の遺伝的進化仮説に基づき、生物の保全は最も安全な選択肢になるというのが回答だそうだ。そうは考えていないと思われる人間たちの多さを考えると、本当に正義が進化しているのか疑問も湧くけれど、個人々々が一度立ち止まって真剣に考えてみる必要のある問題だろう。
お薦め度:★★★★ 対象:生物の保全問題に関心がある全ての人
【冨永則子 20201028】
●「<正義>の生物学」山田俊弘著、講談社
生物の保全はおこなうべきことなのだろうか?もしおこなうべきだとするならば、その理由はどこにあるのだろうか?100万種以上の動植物が絶滅の危機に瀕している現在、手遅れになる前に考えてみる(生物を保全するのが当たり前だ、という前提に疑問を抱いた場合、それに対する回答を明確にする)のが本書の趣旨である。どうしてトキやパンダを保護する必要があるのか?人間のためなのか?生態系のためなのか?弱肉強食に関するジャイアンの誤りや周辺情報(E/MSY値、社会ダーウィニズムやウィルソンの考え方)をながめながらじっくり考えると、正義の遺伝的進化仮説に基づき、生物の保全は最も安全な選択肢になるというのが回答だそうだ。そうは考えていないと思われる人間たちの多さを考えると、本当に正義が進化しているのか疑問も湧くけれど、個人々々が一度立ち止まって真剣に考えてみる必要のある問題だろう。
お薦め度:★★★★ 対象:生物の保全問題に関心がある全ての人
【和田岳 20201028】
●「<正義>の生物学」山田俊弘著、講談社
生物の種の保存は必要か? 必要ならその理由はなにか? 大学の先生が学生に問題を出して、学生の答えを順に論破していって、最後に先生が自分の意見を開陳するという趣向。
「地史的な過去にも大量の種が絶滅しており、絶滅は自然なプロセス」「ヒトも自然の一部」「弱肉強食は自然の摂理」「生存競争は自然の摂理」といった保全不要論をぶった切り。返す刀で、「役に立つから守る」「現代世代の将来世代への義務」などの保全必要論もぶった切る。切れ味はところどころ鈍っているけど、双方の論点はよくまとまっていると思う。
最後に開陳されるのは、「ヒトかヒト以外かを分け隔てることなく、すべての命を尊重すべきである」という<正義>の理論。これに納得できる読者がどのくらいいるかは判らないけど、自分で考える参考にはなるだろう。
お薦め度:★★★ 対象:どうして絶滅危惧種の保全が必要か気になったら
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