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本の紹介「生から死へ、死から生へ」

「生から死へ、死から生へ 生き物の葬儀屋たちの物語」ベルンド・ハインリッチ著、化学同人、2016年8月、ISBN978-4-7598-1822-2、2300円+税


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【萩野哲 20170220】【公開用】
●「生から死へ、死から生へ」ベルンド・ハインリッチ著、化学同人

 生きた者たちが死んだ後の死体あるいは排泄物をリサイクルするスカベンジャーたちの物語。モンシデムシ、コンドル、ワタリガラス、糞虫、キクイムシ、そして人類。これらの動物がどのように死体を処理するのかがメインの話題であり、それらはそれらで大変興味深い。更に本書の特徴は、関連するいろんな話題に脱線する傾向がみられたことであり、それらも大変興味深い話題となっている。例えば、トメントスス属のモンシデムシの鞘翅が飛翔時には裏返り、裏側の黄色が目立つようになって、マルハナバチへの擬態になることなどである。なお、ヒトの死に際し、日本では火葬が通常だが、著者はそれにも否定的。自然と隔絶されない、もっと効率的な方法はないのだろうか?

 お薦め度:★★★  対象:生と死に興味がある人。
【津田香織 20170223】
●「生から死へ、死から生へ」ベルンド・ハインリッチ著、化学同人

 森、海などさまざまな環境でのスカベンジャーたちの働きについての考察。捕食者は華やかな印象があるがスカベンジャー達は悪者的な扱いをうけていることが多い。 死んだ生き物の、弱った生き物はスカベンジャーたちに食べられることによってふたたび命の一部となるが、人間は火葬や土葬をするのでそのサイクルに入っていない。不自然だ。との視点が、現代の葬儀の当たり前を問い直していて面白い。

 お薦め度:★★★  対象:腐食者の役割やその生態について考えたい方へ。
【森住奈穂 20170224】
●「生から死へ、死から生へ」ベルンド・ハインリッチ著、化学同人

 野山で死を迎えた動物の死体は、さまざまな生きものたちの命の糧となる。本書ではマウスに始まり深海に沈みゆくシロナガスクジラまで、死体が他の生き物によって次の命のために使われる様子が紹介される。なかでも、著者が暮らすメイン州の森での観察の様子(死体のサイズや時期、解体具合によって、やって来る腐食者が変わることなど)は生き生きと描かれていて、タイトル通り、生から死へ、死から生へ、命の循環を目の当たりにしているような気持ちになれる。モンシデムシの一種が飛翔の際、マルハナバチに擬態することに気づいたのは、「無邪気さと部分的な知識が混ざり合った観察の結果」なのだそうだ。センス・オブ・ワンダーに憧れる。

 お薦め度:★★  対象:観察好きなひと
【和田岳 20170825】
●「生から死へ、死から生へ」ベルンド・ハインリッチ著、化学同人

 副題の通り、死体を処理する生き物たちの生態が描かれる。「ワタリガラスの謎」で知られているハインリッチは実は虫屋であった。と分かる1冊。
 第1章の舞台は北米。というかハインリッチの家の近所。死体を見つけるたびに、セットしてどんな動物がやって来るかを観察する。やってくるのは、シデムシなどの昆虫から、ワタリガラスなどの鳥、コヨーテなどの哺乳類まで多岐にわたる。そして、この本で熱く語られるのは、ワタリガラスではなく、むしろモンシデムシ。第2章の主役はハゲワシやコンドル。こうした大きな腐肉食性鳥類が暮らすには、常に大きな死体が供給される環境が必要で、大型の草食動物の死体の供給が減少する中で、こうした大型腐肉食性鳥類の生存も脅かされている。第3章は、植物遺体を食べる昆虫やキノコ、そして枯れ木を利用する鳥たちの話。第4章は川をさかのぼって死ぬサケと、海で死んで海底に特殊な環境をつくるクジラが主役。
 全体を貫いているのは、死とは終わりではなく、新たな物語の始まりであるといった観点。きちんと生態系に死体を供給しないと、生きていけない生き物もいるという点は、よく考える必要があると思う。

 お薦め度:★★★  対象:死体はゴミだと思ってる人
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