【冨永則子 20180223】【公開用】
●「生痕化石からわかる古生物のリアルな生きざま」泉賢太郎著、ベレ出版
これは「普通の化石」に関する本ではない! 一般的に化石と聞けば、やはり恐竜やアンモナイトなどをイメージするが、それらの化石を「普通」とするなら、生痕化石は生物の行動の痕跡が地層中に保存された「生物の行動の化石」だ。
普通の化石=体化石は巨大な恐竜やアンモナイトなど、大昔の地球に存在した生き物の姿を現代の私たちの目の前に再現してくれる。しかし、その恐竜たちがどのように行動し、何を食べ、どう暮らしていたのかは体化石だけでは想像しにくい。そこで、現生生物の行動を観察し、その痕跡を調べることで体化石として残らなかった古代の生き物の姿を生痕化石から推測していく。まさしく、現生の生物学と地質学を融合させるハイブリッド自然史学を知る本!
著者は、やたらと地味でゴメンねぇ、読んでくれてありがとうと恐縮しているがとっても説得力があって、なるほどなぁと得心した。
お薦め度:★★★★ 対象:化石といえば恐竜でしょ!という人に
【上田梨紗 20180222】
●「生痕化石からわかる古生物のリアルな生きざま」泉賢太郎著、ベレ出版
生痕化石とは、生物が生活をしていた痕跡(足跡や巣穴・ウンチなど)の化石のこと。その中でも著者は、ウンチの化石が専門の正真正銘のウンチ博士...らしいが、私は半信半疑の目をむけている。Dr.ウンチは、ウンチ化石でテンションが上がると言いつつ、巻末の一問一答で、冷めた発言をしているからだ! それはさておき、巣穴の化石の1つである、トレプティクヌスペダムという生痕化石は、エディアカラ紀からカンブリア紀に変わったことを学術的に定義する際の重要な基準となっているため、地質時代を区分するうえでも重要な役割を担っているそうだ(エディアカラ紀には捕食者はいなかったため、地面にもぐる必要がなかったとされている)。すごいよ生痕化石!
生痕化石について、わかりやすく説明をしてくれており、第2章の生痕化石研究史がとても興味深いが、古生物の「リアルな生きざま」は、あまりわからなかった。
お薦め度:★★★ 対象:化石といえば恐竜の骨と答える人
【中条武司 20180222】
●「生痕化石からわかる古生物のリアルな生きざま」泉賢太郎著、ベレ出版
過去の生物の痕跡、すなわち生痕化石は骨や貝殻などの体化石よりも時にはリアルな生物の生活を残していることが多い。さらに生活だけでなく地層の形成に関する鍵も持っている可能性がある。生痕化石を専門にしている著者が生痕化石を熱く語る、のかと思いきや、ちょこちょこと話題を変え、研究の入口だけを紹介する感じの内容。生痕化石はもっとおもしろいし、いろいろ語るべき事があるはず。帯のあおり文、盛りすぎじゃない?
お薦め度:★★ 対象:骨や貝殻だけが化石と思っている人
【西本由佳 20180218】
●「生痕化石からわかる古生物のリアルな生きざま」泉賢太郎著、ベレ出版
生痕化石とは、生きものそのものでなく、その生活の痕跡が化石として残ったものをいう。足跡やフン、巣穴などの化石が写真で紹介される。カブトガニが移動した足跡と、そこで死んでしまった体が一緒に残された化石の写真は印象的。地球で何度かおきた大量絶滅のあと、まだ単純な生態系しか回復していなかったろうと思われた時代のフン化石が、魚と大型脊椎動物のものと推定され、考えられていたより複雑な生態系がすでに回復していたとわかったという話が、生痕化石の研究成果としてあげられている。その話がおもしろかっただけに、ページを多くあてている現在の化石の写真や研究の様子よりもっと、地学的な時間スケールを感じさせる研究内容にまで踏み込んでほしかった気がする。
お薦め度:★★★ 対象:化石といえば恐竜とアンモナイト、という人
【西村寿雄 20180219】
●「生痕化石からわかる古生物のリアルな生きざま」泉賢太郎著、ベレ出版
生痕化石というと「古生物の痕跡が地層中に保存されたもの」と定義されている。今までにも恐竜やゾウなどの足跡化石や糞化石が研究成果として知られている。著者はその糞化石研究者である。全体としては、生痕化石研究の全体像を描きたいのだろうが今ひとつ具体的な成果が書かれていない。著者の研究分野でも、ウンチ研究のアウトラインを紹介しているだけで、ウンチの化石からどんな古生物のどんな姿や生態がわかってきたのかの具体的な成果が見えてこない。近年の化学分析技術を使えば「糞化石」からさらなる研究は期待される分野でもある。こういう研究分野のおもしろみは伝わるかも知れない。
お薦め度:★★★ 対象:古生物学に興味のある人