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本の紹介「世界はなぜ月をめざすのか」

「世界はなぜ月をめざすのか 月面に立つための知識と戦略」佐伯和人著、講談社ブルーバックス、2014年8月、ISBN978-4-06-257878-3、920円+税


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【上田梨紗 20171029】【公開用】
●「世界はなぜ月をめざすのか」佐伯和人著、講談社ブルーバックス

 前半は、月(科学)の基礎知識を雑学をまじえながら知ることができます。ピンポン玉を使った衝効果の実験はわかりやすく、地球から見る月は毬ではなく盆だと納得してしまう。
 中盤からほぼ地学の話になる。月の資源を取り合う各国、各企業団体のつばぜり合いは、なんだか映画のようだ。実際「かぐや」はロケット打ち上げ業務を民間委託した最初の打ち上げだった。三菱重工さんカッコイイ。
 月は宇宙の入り口で、私たちは宇宙大航海時代の渚にいますと、著者は言う。人間の好奇心はとめられない。

 お薦め度:★★★★  対象:月に行きたい人、地学に興味がある人、宇宙が好きな人


【中条武司 20171029】
●「世界はなぜ月をめざすのか」佐伯和人著、講談社ブルーバックス

 月探査が世界で今盛り上がっているそうだ。アメリカ、中国、ロシア、EU、そして日本も。国威高揚が目的だったアポロ計画とは違って、宇宙開発基地としての月の有用性が開発のモチベーションになっているのがよくわかる。もちろん純粋科学としての月探査も多く紹介されている。月のマグマ分化や近くの形成とか、地球で考えられるプロセスはリセットしないとわからないのではなかろうか。やや月開発へのアジテーションのような感じもする本だけど、それで地質や天文に興味が引かれるのならいいのではないだろうか。

 お薦め度:★★★  対象:宇宙探査を絵空事と思わない人


【西村寿雄 20171016】
●「世界はなぜ月をめざすのか」佐伯和人著、講談社ブルーバックス

 自称「月科学者」が月探査計画への熱い思いを語っている。「いま世界の多くの国々が月をめざしている」、「いまや世界は月探査ブーム」と、いきなり月への危機感をあおる。宇宙開発の主力を月探査へとアピールしている。それだけに、現在での月研究の成果をわかり易く書いている。「人類の次のフロンティアは月である」「今夜の月が違って見えるはなし」「月が分かる〈8つの地形〉を見に行こう」「「これだけは知っておきたい〈月科学の基礎知識〉」「〈かぐや〉があげた画期的な成果」など、月について詳しい話が続く。最後は「宇宙開発における日本の役割とは」と話を進める。ロケット開発はミサイル技術にも転用できるので水面下での駆け引きもある。各国のロケット開発の中で、日本は平和目的のリーダーシップをとってきたいとの意気込みも書かれている。最後に「地学はフロンティアの学問である」「冒険の航海へ出発しよう!」としめくくる。

 お薦め度:★★★  対象:月研究を夢見ている人

【萩野哲 20171010】
●「世界はなぜ月をめざすのか」佐伯和人著、講談社ブルーバックス

 アポロ計画で人類が月に立ち、もはや月探査の時代は終了した、と日本人は考えているのではないか?と著者が憂うるほど世間は無関心である。だが、現実の世界では「月探査ブーム」を迎えており、各国は競って月探査計画を策定し実施している。著者は多数の月探査計画書の作成に関わってきたが、そのような計画書に書けない月の面白さを伝え、月への関心を持ってもらいたいとの想いで本書は書かれた。章毎に、1)なぜ今月探査か、2)月への興味、3)月の地形、4)月の基礎知識、5)「かぐや」の成果、6)月資源の利用、7)更なるフロンティアの広がり、8)今後の予想、9)日本の役割が、ある意味“喜々として”語られている。小さな本ながら、著者の月への情熱がひしひしと感じられ、月の起源から文部省唱歌の「月」の秘密まで、ALL ABOUT MOONに仕上がっている。

 お薦め度:★★★★  対象:今まで月に無関心だった人。


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