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本の紹介「世界の測量」
「世界の測量 ガウスとフンボルトの物語」ダニエル・ケールマン著、三修社、2008年5月、ISBN978-4-384-04107-1、1900円+税
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【加納康嗣 20090826】
●「世界の測量」ダニエル・ケールマン著、三修社
ドイツが誇る知の巨人、博物学者・地理学者であるフンボルトと、数学者・天文学者・物理学者であるガウスの二人を主人公にした哲学的冒険小説である。「旅行と収集」と、「抽象化と思考」というまったく違った研究手法から地球を測量しようとした偉人たちの人間模様である。予備知識がないものにはどれが真実でどれが虚構かは定かでなく、凡才には理解しがたい定理や法則が次々に出てくるが、舞台設定として記号のように見流していくに限る。すると、二人の偉人の孤独とエゴ、滑稽さが浮き彫りになってなかなか面白い。
気になったことの一つは「ドイツ的である」こと。セックスの最中に発想にひらめき、中断して書き留める、墓場からインデオの死体を標本として収集し、探検中数ヶ月一緒に持ち歩くことなど、周囲のこと等かまうことなく、突き進み、無神経で独善的である。この悲しいまで「ドイツ的である」ことが大きなテーマになっている。2つ目は、前述した「人間の死体収集」である。これが真実ならヨーロッパ文明の死体に対する考え方を知る一例ではないかと思える。
お薦め度:★★★ 対象:ドイツ人を知りたい人、科学の発見時代の冒険を知りたい人
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