友の会読書サークルBooks
本の紹介「戦国時代のハラノムシ」
「戦国時代のハラノムシ 『針聞書』のゆかいな病魔たち」長野仁・東昇編、国書刊行会、2007年4月、ISBN978-4-336-04846-2、1000円+税
【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]
【加納康嗣 20071220】【公開用】
●「戦国時代のハラノムシ」長野仁・東昇編、国書刊行会
時は戦国時代、大阪茨木の鍼立医が五臓六腑に棲息する63種の奇々怪々な虫たちを明らかにした。虫の図は、医学書「針聞書」の約半分を占め、九州国立博物館が現在によみがえらせた。「心と体の隙間に跳梁して、神を操り、欲望や感情を掻き立て、気・血・精を乱して思いもよらない行動や症状を引き起こし、ついには本当の病気を招き、ひどいときには死なせてしまうという。」兎に角見えない奴らであるから、写実的な絵を描くことは困難でる。畢竟想像と空想が入って、誰にでもわかるヘタクソな絵にならざる得ない。庚申の夜にちぎると天罰の病を持つ幼虫がとりつくとか、精力絶倫になって色事を好むとか、淫乱な気が収まらないとか、読者の虫をワナワナとかき起こす虫もたくさん発見されている。ちなみにこれらの治療法のなかには、口づてしか教えられない秘伝もあるという。隠さないで!と我が猥褻な虫がまたうずいている。寄生虫やヘビのようなものもいるが、ナウシカのムカデトンボや新世紀エヴァンゲリオンの使徒に似た奴で、漆原友紀がマンガ「蟲師」に書いた「およそ遠しとされしもの/下等で怪奇/見慣れた動植物とはまるで違うとおぼしきモノ達/それら畏敬の一群をヒトは古くから畏れを含み/いつしか総じて/「蟲」と呼んだ。」みたいなモノがこの世に再び現れ出たのである。メチャ面白い。
お薦め度:★★★★ 対象:面白いものが好きな人
【高田みちよ 20071205】
●「戦国時代のハラノムシ」長野仁・東昇編、国書刊行会
人間の体の中には病気を起こすムシが住んでいる。もしくはムシが入ってくるから病気になる。
戦国時代の人たちは、病気をイメージではなく、ムシという実在の動物が引き起こす騒動であると信じていたらしい。疳の虫や大酒の虫なんかもいる。体調が悪いと出てくるムシもいれば、入り込んで病気を起こし、死にいたらしめるムシもいる。ムシの絵と生息地(心臓とか)、特徴、病状、治療法、症例を記載した病原虫図鑑になっていて面白い。
しかし本書は単なる遊びの書ではなく、昔の日本人がムシをどう考え、どう対処したかや、ムシの歴史や、医学としてのムシの位置づけなども説明されている。信長の重臣が割腹自殺した際に、亀のようなムシが出てきたという事件もあり、日本人がムシを当たり前のものとして信じていたことが伺える。ムシの治療には漢方と針治療が必要であり、針の指南書である「針聞書」の解説もある。
九州国立博物館に行けば、ハラノムシのぬいぐるみなどのグッズが買えるらしい。
お薦め度:★★ 対象:近世の日本文化を勉強したい人、単なるゲテモノ好きの人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]