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本の紹介「死物学の観察ノート」

「死物学の観察ノート」川口敏著、PHP新書、2001年6月、ISBN4-569-61668-2、660円+税


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【和田岳 20030627】【公開用】
●「死物学の観察ノート」川口敏著、PHP新書

 哺乳類の死体マニアである著者が、集めた哺乳類の死体からわかることを色々と紹介してくれる。話題は、食肉類の顔の模様、イタチ類の大きさと分布、食肉類の下顎骨と食性の関係、ペニスや陰茎骨、腸の長さと食性の関係、交通事故死する季節、と多岐にわたる。
 哺乳類の死体を拾ってからの処理については参考になるし、「観察には仮説が必要である」という部分は気に入った。日本では廃れつつある形態学の入門書としても、役に立つかもしれない。
 
 お薦め度:★★★  対象:哺乳類が好きな人

【河上康子 20030627】【HPのみ公開用】
●「死物学の観察ノート」川口敏著、PHP新書

 子供の頃からコレクターであった著者が、‘競争相手が少なく、経済的でかつマニアの王道を歩ける’分野として死体収集を選び、長じて‘死物学’ から見えてきた‘生物学’の世界をコミカルに描く。死体をじっくり観察することで分かる、哺乳類の模様から色、大きさ、耳やしっぽ、顎の骨、交尾器、腸の長さなどの違いから、その分類や生態の違いを説明している。最終章の‘そこに死体があるわけ’では、具体的なデータが多用され、落ち着いて読めるが、その他の章はやや散漫で断定的であり、読みながら不安感をぬぐい切れない。一方、その独特の語り口が、本書の魅力にもなっている。丁寧で美しい著者のスケッチも充分楽しめる。
 
 お薦め度:★★★  対象:生き物が半端でなく好きな中学生以上

【瀧端真理子 20030729】
●「死物学の観察ノート」川口敏著、PHP新書

 もし、自分の目や手で確かめたことしか信じられないとしたら・・・読めばそんな不安に駆られる本である。小学校の理科の授業で、スケッチを課題に出されても、川口少年は、「ぼくのアブラナは花びらが足りないのかもしれない」などと考えてしまう。「種という単位は実在しないのではないだろうか。種以外の分類単位には定義がない」などと刺激的な記述が続く。
 第6章「恐るべきペニス」には考えさせられる点が多々ある。人間のメスは何を求めてオスをよりすぐってきたのか、読者は思わず想像をたくましくするに違いない。
 
 お薦め度:★★★  対象:脳ミソのリフレッシュをしたい人

【田中久美子 20030625】
●「死物学の観察ノート」川口敏著、PHP新書

 動物の死体を拾って、観察、識別して、仮説を立てて、推測し、考察していったら何が見えてくるのだろう。
 この本は、著者がこれまでに拾って観察してきた動物死体の記録ノートをまとめたものだ。分類のポイント、動物の模様についての仮説、動物の交通事故死の状況など、観察、記録し続けることで、動物の生態の様々な事がわかってくる。
 死物学の手引きともも言えるだろう。
 
 お薦め度:★★★  対象:皮むきジュニアには特に、動物好きの人にももちろん

【六車恭子 20030622】【HPのみ公開用】
●「死物学の観察ノート」川口敏著、PHP新書

 野生動物の死体にでくわすことは平凡な日常に仕掛けられたドキドキの場。生物学と言えば生態学全盛期にあえて死物学にこだわる著者の魅力満載のレシピ集の趣がある。
 彼はこの詳細な観察記録を通して、仮説のない観察が観察ポイントを欠くことに気づき独自なプロファイリングの方法を編み出していく。獲物に気づかれずに忍び寄る工夫のひとつ、「目玉かくしのパンダ模様仮説」、お腹の白いろは降伏のサインなのか、ジネズミはネズミと言うネーミングがあるが、れっきとしたモグラだという、形では欺かれても、骨格では何の仲間かが解る種明かしや、分類分け不可能に見えたアカネズミとヒメネズミの散布図から二つの集団を分離する手際といい、死物学による裏技は侮れない。死物愛好家が殖えそうな一冊です。
 
 お薦め度:★★★  対象:生物学を志す若い世代に

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