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本の紹介「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!」
「深海生物テヅルモヅルの謎を追え! 系統分類から進化を探る」岡西政典著、東海大学出版部、2016年5月、ISBN978-4-486-02096-7、2000円+税
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【森住奈穂 20161027】【公開用】
●「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!」岡西政典著、東海大学出版部
著者は分類学者。分類学とは、生物に名前をつけ、それらを系統立てて整理する学問。さて、テヅルモヅルとは、クモヒトデ綱ツルクモヒトデ目の各系統にバラバラに存在する腕が分岐する種、とのこと。あぁややこしい。だってツルクモヒトデはみんな腕が分岐している!そしてクモヒトデはヒトデとは別の生き物。だから「テヅルモヅルってなに?」と聞かれたら、本書を読み終わった今でも上手く答えられる自信がない。分類学の研究スタイルや意義が熱く語られているのだが、わたしの頭はテヅルモヅルの腕並みにこんがらがってしまった。
お薦め度:★★ 対象:分類学の実践部分を知りたいひと
【西本由佳 20161023】
●「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!」岡西政典著、東海大学出版部
テヅルモヅルとは、クモヒトデという分類の生きものだ。それはタコとヒトデを足して割ったような姿をしていて、著者によれば「かっこいい」「キュート」な生きもので、海底にひっそり暮らしている。著者はこの種の同定(クモヒトデのなかのなんという種類?)にまず苦労する。そして、それをクリアして、いよいよ分類(どれとどれが近い仲間?あるいは新種?)にとりかかる。分類学という分野がある。これまでは形態による分類が主に行われてきたが、そこには見る人の主観が入り込まざるを得ない。そこでDNAの分析によって、客観的な系統図を描くことになる。著者が観察からうすうす感じていた分類と一致したときは、とてもうれしいそうだ。本全体を通して思うのは、なんか青春してるなあ、ということ。20代という、気力も体力もいちばん充実している時期に、これだけ好きなことに打ち込めたのは、もちろん努力も苦労もあるだろうけど、幸せな時間だったろうなと思う。
お薦め度:★★★ 対象:研究者が何をしているのか知りたい人
【萩野哲 20161026】
●「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!」岡西政典著、東海大学出版部
分類学の面白さを凝縮した1冊。“珍しい生物に出会いたい”と漠然と考えて大学に入学した学生が、その期待に応える教室に幸運も味方して入り、更なる幸運をつかんで、だんだんとプロの分類学者になっていく過程が記されている。分類学とは何かに始まり、分類学では何をしないといけないか、どんなポイントで分類しているか、そして発見の楽しさが語られていて、生物を少し詳しく見てみたい人には読んでみる価値があろう。
お薦め度:★★★ 対象:生物の世界をもっと深くのぞいてみたい人
【和田岳 20161028】
●「深海生物テヅルモヅルの謎を追え!」岡西政典著、東海大学出版部
フィールドの生物学シリーズの一冊。例によって、頼りない学生が、恩師に指導されて、海外などにも出かけたりして、なんとか一人前の研究者になる。この場合は、クモヒトデ類の分類研究者に育つ話。
とにかくテヅルモヅルを採るのに悪戦苦闘、文献集めに頑張り、同定が分からず、記載に苦しむ。なんとか論文を仕上げて、海外で学会発表。という展開。このシリーズ定番の展開ではあるけど、分類学及び記載というプロセスをけっこう丁寧に紹介してくれている。そんな本は意外と少ないので、分類学の実際を知りたい人には参考になると思う。
それにしてもテヅルモヅルって生き物がいるのは知ってたけど、クモヒトデ類の一群の名前とは知らなかった。
お薦め度:★★ 対象:分類学あるいは記載がどのように行われるのかが知りたい人、あるいはこのシリーズのファン
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