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本の紹介「森林と人間」
「森林と人間 ある都市近郊林の物語」石城謙吉著、岩波新書、2008年12月、ISBN978-4-00-431166-9、700円+税
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【和田岳 20091021】【公開用】
●「森林と人間」石城謙吉著、岩波新書
一度行ったことがある。平地に明るい綺麗な広葉樹林が広がり、クネクネと小さな川が流れていた。入口付近は誰でも自由に入れるようで、ちょっとした公園のようだった。林の奥には林冠を観察する設備があり、川が温室のように覆われているのを見て、おおお!これがあの、と喜んだ覚えがある。生態学関係者にとって、北海道大学の苫小牧演習林といえば、大規模な野外実験を展開し、最先端の生態学の野外研究を展開しているとても有名な施設の一つなのだ。その苫小牧演習林も、かつては全然違った。それが現在のようになるまでの歴史が、林長だった著者の奮闘が語られる。
生態学関係者からすれば、これは成功の物語。そして、生物多様性が市民権を得つつある現在、これからの林学の一つの方向性を示す物語でもある。でも、林学と林学関係者への痛烈な批判でもある。林学関係者はこの本をどのように読むんだろう?
お薦め度:★★★★ 対象:スギやヒノキの植林よりも里山林が好きな人
【太田行二 20090926】
●「森林と人間」石城謙吉著、岩波新書
この本は、北海道大学苫小牧地方演習林が舞台です。石城謙吉が赴任した時には、枯れ木が多く、手入れが行き届かず、放置されたままに忘れられた、傷ついた森でした。石城は、この森を自然研究の拠点にすると共に、市民を受け入れて、休養林にしたいと決意しました。そこで、まず「林種転換」を止め、林道を作り、植林ではなく、病気などで弱った木・傾斜木・枝が多過ぎる暴れ木・枯れ木・倒木などを「択伐」することにしました。徐々に美しい森へと変わったのです。更に、コンクリートの護岸を撤去し、淵を作り、池を掘り、湿原を作りました。すると、様々な昆虫が集まり、魚も来て、鳥達も集まるようになりました。そして、様々な分野の研究者・大学院生達が全国から集まり、自発的なゴミ拾いなど、市民もこの森を守ろうとし始めました。やがては自然保護運動の拠点とも為ったのです。最初は、非常識な森作りと考えられたのですが、今では、美しい森が市民に役立つ森になったのです。
お薦め度:★★ 対象:いい話を知りたい人
【加納康嗣 20090826】
●「森林と人間」石城謙吉著、岩波新書
北大の演習林で都市の側にある苫小牧研究林は市民の森、森林生態研究の森として有名である。札幌からも近く、バードウォッティングでもよく知られている。舶来の林業によって荒廃し、地域から隔離された森を、総合的な自然研究の場として、また市民が親しむ拠点として見事に再建させた立役者本人が森の再生過程を語る。
「複雑な自然現象を自然の場で、しかも現代科学のレベルで体系的に把握する新しい自然誌(ナチュラル・ヒストリー)を実現しよう」というのが著者の考え方である。この考え方の実践を著者が内心で「フィールド・サイエンス計画」と名付けている。いろいろの分野に研究フィールドを開放するだけでなく、データの継続的な収集システムを作り、それを共有する形で多分野の研究者が同じフィールドに結集して活動を展開する体制である。これによって森林生態系の複雑な機能の解明等を求めて本格的な取り組みが出来る道が開かれた。
本書には懐かしい名前も登場する。日浦さんのご長男、現林長 日浦勉教授である。著者を助け、森林再生に尽力した姿が文脈から想像され、嬉しく読み進んだ。市民の森に再生させる施業部分(4−6章)は興味深く、さわやかな感動を覚えた。
お薦め度:★★★★ 対象:人と森林の共生に思いを寄せる人、森のいのちを尊ぶ心の人
【西村寿雄 20090903】
●「森林と人間」石城謙吉著、岩波新書
苫小牧市街と隣り合わせに広大な北大演習林が広がる。その演習林に、「無断入林」で森を楽しんでいる市民の姿があった。林長として赴任した著者は、その風景をさわやかに見守っていた。
著者が演習林に赴任して驚いたのは森の大半が荒れ果てたカラマツ林だった。かつての多様な広葉樹林が経済優先のカラマツ林に変換させられていたのだった。寒々しい森林風景に、著者は「林学」とは何か自問する。やがて著者は、市民の休養の森、生物多様性の森を頭に描く。やがて著者は、針葉樹の森から、広葉樹も入り交じった生物多様性の森の育成へと舵をきった。人と森を結ぶ林道もたくさん作られた。
やがて、森には多くの生き物が生息するようになった。かつての演習林が研究林となり、多くの市民に親しまれる森へと変身していった。
一研究者の理念によって、人と自然が共生する森造りへ転換していった壮大なプロジェクト物語である。
お薦め度:★★★★ 対象:森林生態学をめざす人、ナチュラリスト
【萩野哲 20091022】
●「森林と人間」石城謙吉著、岩波新書
苫小牧市街と隣り合わせに広大な北大演習林が広がる。その演習林に、「無断入林」で森を楽しんでいる市民の姿があった。林長として赴任した著者は、その風景をさわやかに見守っていた。
著者が演習林に赴任して驚いたのは森の大半が荒れ果てたカラマツ林だった。かつての多様な広葉樹林が経済優先のカラマツ林に変換させられていたのだった。寒々しい森林風景に、著者は「林学」とは何か自問する。やがて著者は、市民の休養の森、生物多様性の森を頭に描く。やがて著者は、針葉樹の森から、広葉樹も入り交じった生物多様性の森の育成へと舵をきった。人と森を結ぶ林道もたくさん作られた。
やがて、森には多くの生き物が生息するようになった。かつての演習林が研究林となり、多くの市民に親しまれる森へと変身していった。
一研究者の理念によって、人と自然が共生する森造りへ転換していった壮大なプロジェクト物語である。
お薦め度:★★★ 対象:自然との付き合い方に興味がある全ての人
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