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本の紹介「死都日本」

「死都日本」石黒耀著、講談社、2002年9月、ISBN4-06-211366-X、2300円+税


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【中条武司 20050302】【公開用】
●「死都日本」石黒耀著、講談社

 南九州に起こった大規模火砕流を伴う噴火とそれに関連した人々を描いたSF。SFとはいえ、現実に起こる可能性のある大規模火砕流や土石流などの地質学的な災害、そして噴火に伴う今日的な問題である通信障害など、いかに私たちの生活が本当の噴火災害の前に無力であるかをよく示している。
 文体や小説の構成がやや古くさい、多少の間違いがあるなんて吹き飛ばしてくれる本。読んだ人はこれをただのSFとは思わずに、地質学への興味を持って欲しい。

 お薦め度:★★★  対象:専門の地学の本は堅苦しいと思う人に

【六車恭子 20050223】
●「死都日本」石黒耀著、講談社

 20XX年6月18日、南九州の霧島の大噴火を契機に、日本を始め世界が震駭していく様を実況中継のように読ませるSFファンタジーだ。今まさに進行している大噴火の紛糾していく様は既に何度も私たちの祖先は経験していたことが明かされていく。
 この未曾有の体験を未来に引き継ぐために密かなプロジェクトが存在した。「K作戦」はあらゆるジャンルの頭脳を結集して、「神の手」をくり出し、「死都日本」から世界に発信することで、この大災害の「負」を「正」に転じる戦術だった。
 歴史はくり返される、神話が古の人々からのメッセージだったことを納得させる力を感じる。火山学と神話世界がブレンドされて楽しめそうだ。

 お薦め度:★★  対象:天変地異に備えるために、防災の心構えを深めるために

【村山涼二 20050223】
●「死都日本」石黒耀著、講談社

 日本を襲う大火山災害をテーマとした小説である。
 霧島火山が破局的大噴火を起こし、火砕流は鹿児島、宮崎など南九州を襲う。防災工学者と新聞記者の被災地より必死の脱出行を通し噴火災害の臨場感を感じる。火山灰は沖縄・北海道を除く日本全土を覆い、12時間で死者300万人という被害を受け、更に雨が降ると土石流による被害は拡大する。火山灰で覆われた山林・畑・市街地では農業・工業生産活動は出来ない。噴火によるエアロゾルは北半球を覆い日光は遮られ寒冷化を招き世界的食糧危機を招く。日本政府は噴火を予知し、防災、政治的対応に努める。首相は災害に強い日本再生を呼びかける。
 小説ではあるが、火山・地震災害を何時被るかも知れない日本に住んでいることを、われわれに、又、政府に自覚を呼びかけている。

 お薦め度:★★★★  対象:災害に備える心ある人々に

【和田岳 20050222】
●「死都日本」石黒耀著、講談社

 南九州で大規模な火山の噴火が起きるという内容のSF。520ページの大作の内、400ページほどは、火山の噴火からの24時間の記述に費やされる。とにかく想像を絶する規模の火山災害、そして右往左往して逃げまどうしかない人間達。24時間で200万人以上が死ぬという大惨事が、描かれていく。
 とにかく火砕流がいかに壊滅的な被害を与えるかと、土石流の怖さはよくわかる。サージとかラハールといった火山用語も覚えられる。
 本にもついてはいるけど、読むときは南九州の地図を用意しておくといいだろう。

 お薦め度:★★★  対象:大規模な火山災害というのがどんな感じか知りたい人

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