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本の紹介「自然はそんなにヤワじゃない」
「自然はそんなにヤワじゃない 誤解だらけの生態系」花里孝幸著、新潮社、2009年5月、ISBN978-4-10-603639-2、1000円+税
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【魚住敏治 20101216】
●「自然はそんなにヤワじゃない」花里孝幸著、新潮社
近年、生物の多様性保全や生態系保全という言葉がよく使用されるが、その使用のしかたについて、疑問を呈しています。たしかに生態系を考える基準をどこにおくかが重要という視点は納得できますが、書かれている例の要素が単純化されすぎているような気がします。導き出される結論にあいまいさがのこるのも気になります。
最終的な結論が『生態系全体のバランスを意識しながら人間社会をいかに発展させていくか』には、いささか拍子抜け。
まあでも、それだけ自然って一筋縄ではいかないという事なのかもしれません。
お薦め度:★★★ 対象:自然の見方に関心のある方
【中条武司 20101215】
●「自然はそんなにヤワじゃない」花里孝幸著、新潮社
プランクトンを専門にする著者は、間に見える大きな生きものを中心とした生物多様性に関する議論がお嫌いなよう。水ものなら魚、あとはトキ、クジラ。または人間には害の及ぼす洪水、自然以外を及ぼすとされる殺虫剤やダム、道路などもある意味での生物多様性に寄与していると著者は言う。そして大事なのは、誰の目線で生態系や生物多様性を語るによって、その論点が違うことを指摘する。
とはいえ、全体を通じて、著者の戯言というか、思いつきをつらつらと聞いているよう。図書館や誰かに借りて読むくらいならいいけど、お金を出して買ってまで読むような本じゃないなあ。
お薦め度:★★ 対象:簡単に生物多様性の雰囲気を掴みたい人
【和田岳 20101217】
●「自然はそんなにヤワじゃない」花里孝幸著、新潮社
「魚がたくさん棲めるきれいな湖にしよう」。山の湖にこんな看板が出てたらどう思う。うんうんきれいな湖にしなくっちゃ。と感じるのが、環境問題に意識の高い多くの人。著者は、そこに噛み付く。普通、山の綺麗な湖に魚は生息していない。そこでは、目には見えないけどミジンコなどを頂点とするプランクトンの世界が拡がっている。そこに魚を放すと、ミジンコが減り、植物プランクトンが増える。湖の透明度は下がる。魚が多いと、湖は透明ではなくなるのだ。
生物多様性に関心がある人でも、ミジンコの都合にまで頭が回らないのが普通。ミジンコ視点で世の中を見たら、どんな具合になるのか。ミジンコ研究者が、ミジンコ視点で、いまどきの生物多様性についての議論に御意見したエッセイ。ただ、かなり言いたい放題の部分があるので、一から十まで鵜呑みにしない方がいいかもしれない。
お薦め度:★★ 対象:魚がくらす池を好むあなた
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