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本の紹介「植物が出現し、気候を変えた」
「植物が出現し、気候を変えた」デイヴィッド・ビアリング著、みすず書房、2015年1月、ISBN978-4-622-07872-2、3400円+税
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【西本由佳 20160411】【公開用】
●「植物が出現し、気候を変えた」デイヴィッド・ビアリング著、みすず書房
4億年ほど前の岩から見つかった初期の植物には、葉がなかった。彼らは光合成を裸の枝々でまかなっていた。3億年ほど前、植物や動物たちは巨大化していた。ヒカゲノカズラのような小さな植物のなかまが、40mもの高さで熱帯湿地に林立していた。4〜5千万年前、極地には森林が広がっていた。潤沢な二酸化炭素によって当時は極地まで温められていた。しかし、寒さによる呼吸の制限がないなか、極地の暗い冬を彼らがどうやって乗り切っていたかは、長らく謎だった。地学的な時間の流れでみると、地球はいま自分が見ているのとは違う姿をしていたのだと気づかされる。温室効果ガスによる温暖化や生物の大量絶滅は人間がいなくても、くりかえし起きたことだ。自然は常に動いている。ただ、いまその動きを人間が大きく加速したり変化させていることは、問題なのだろうと思う。
お薦め度:★★★ 対象:地学的な時間の流れを感じたい人
【中条武司 20160825】
●「植物が出現し、気候を変えた」デイヴィッド・ビアリング著、みすず書房
表題だけを見て、植物が酸素を生みだしたことからはじまるのだろうなあと思っていると、そんな部分はまったく触れられず、植物が葉をつけた過程の説明がはじまる。曰く二酸化炭素濃度が大きく影響しているのだとか。続いて酸素濃度と植物や昆虫の巨大化、オゾン層の破壊、恐竜のいた超温室時代、暖かい極域の話など、これらがすべて植物化石を調べることで分かるという。正直かなり植物化石を見直した。しかもこれらの多くの研究で著者が関わっているのもすごい。いかんせん全体に長い上、各章の冒頭のあまり本編と関係のない逸話が読むのがしんどい。あとタイトルがあまり内容を示していない。元タイトルとどうせ変えるならもっとセンスのいいタイトルつければいいのに。
お薦め度:★★★ 対象:地球史において植物のことをなめてもらっては困ると思う人
【和田岳 20160826】
●「植物が出現し、気候を変えた」デイヴィッド・ビアリング著、みすず書房
表題を見て、てっきり植物が地球の大気の酸素分圧を高めた、という話をするんだと思った。が、もっともっと植物化石研究の意義を熱く語った本だった。第8章の扉にはっきり書いてある。
「本書で伝えたかったことは2つある。1つは、植物生理学と古植物学を一体化させれば、植物化石に新しい存在意義を与えることができる(すなわち、植物化石は地球の歴史をはかるすばらしいタコメーターとなる)ということ。もう一つは、植物自身が自然を変える大きな力となりうるということだ」
植物は地球の二酸化炭素濃度を減少させ温暖化を緩和し。酸素濃度を高めて動物の巨大化の引き金を引いたらしい。胞子の突然変異はオゾン層破壊を示し、葉っぱの気孔の密度からは二酸化炭素濃度の変化を推定できる。極地の森林やイネ科植物の興隆は、地球環境についての謎を提供してくれもする。
植物化石研究は決してつまらなくなんかないぞ! という植物化石屋さんの叫びの一冊。確かに風が吹けば桶屋が儲かる感じの話は面白い。
お薦め度:★★★ 対象:植物化石の研究なんてつまらないよね、と思ってる人
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