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本の紹介「植物のかたち」
「植物のかたち その適応的意義を探る」酒井聡樹著、京都大学学術出版会、2002年5月、ISBN4-87698-319-4、2300円+税
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【和田岳 20050629】【公開用】
●「植物のかたち」酒井聡樹著、京都大学学術出版会
現在は東北大学の助教授で、学生を指導する立場にある著者が、大学院時代に右往左往して研究に取り組んだ経験を語った本。と同時に、タイトルどおりカエデ類を中心に植物のかたちについての研究結果も紹介されている。
なんとなく取り始めたデータ。研究目的を尋ねられても答えられない。ゼミではボコボコにいじめられる。修士論文に「なにをいいたいのかわからん」と言われる。今は一人前の研究者も、昔はこんなにお馬鹿なことをしてたのだと再確認して、勇気をもらいましょう。
お薦め度:★★★ 対象:研究者を目指している人、特に挫折しかけている人
【瀧端真理子 20050424】
●「植物のかたち」酒井聡樹著、京都大学学術出版会
『これから論文を書く若者のために』の著者、酒井聡樹さんが、自ら選び取った理想的な研究環境の中で、研究者としての成長を語る本。前半は、カエデの分枝伸張様式、後半は、「草の形の多様性の進化」を説明する解析的数理モデルの研究(と、数々の失敗)が取り上げられている。論文を書くためなら手段(例えば、コンピュータシミュレーションのためのプログラム作成など)を選ばす、の酒井さん。「自分自身にとって必要だと自分自身で考えたことを勉強し、自分の頭で考えたことを自分自身でやってみた」の一文が、まさにこの本の要約と言えよう。
お薦め度:★★★★ 対象:論文を書いている人、書こうとしている人
【六車恭子 20050902】
●「植物のかたち」酒井聡樹著、京都大学学術出版会
異分野のことでも楽しく読める、不思議な本だ。著者の専門は数理生態学。植物の形の多様性の進化について理論的に解析することだという。
ここで述べられているのは修士・博士課程で取り組んだ「カエデ稚樹の形の適応進化の研究」と「草の形の多様性の進化」。本を読むことで彼の数理解析の道筋をたどる道ずれになれたのだ。「研究する人生」をこれほど個性的に喜びに導く書き手も珍しい。仮説(目的)なき人生の徒労が身にしみてくる。進化生態学の数式が必要なのは今ここにいる読み手かも知れない、ドキリとさせらた次第です。
お薦め度:★★★★ 対象:理論好きな人も、そうでない人も
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