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本の紹介「「絶滅の時代」に抗って」

「植物の季節を科学する 魅惑のフェノロジー入門」永瀬藍著、共立出版、2024年11月、ISBN978-4-320-00943-1、2100円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。

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【ケンタロウ 20250425】
●「植物の季節を科学する」永瀬藍著、共立出版

 植物生態学、植物分類学の専門家で現在国立科学博物館でキュレーターという仕事をしている著者が、写真や図をたくさん用いてコラムもあり専門知識がなくてもわかるようにわかりやすく解説されている。横書きに。
 前半では、著者が学部4年生の時にフェノロジーの研究を始めるきっかけとなった出来事から始まり、大学院生で研究を始めた東南アジアでの植物フェノロジーの研究について。フェノロジーとは、季節的な気候変化に応答した生物のライフサイクルやイベント(植物における発芽や開花、結実などの現象、動物における繁殖、渡り、冬眠などの行動)またはそれらを研究すつ学問のこと。
 後半では、国立科学博物館の標本室や標本群、アウトリーチ活動の重要性について、そしてこれから研究を目指してしている人たちへのメッセージなど。

 お薦め度:★★★  対象:植物のフェノロジーに興味がある人や研究職に関心を持っている人たちへ
【西本由佳 20250209】
●「植物の季節を科学する」永瀬藍著、共立出版

 フェノロジーとは、「季節的な気候変化に応答した生物のライフサイクルやイベント、またはそれらを研究する学問」とされる。植物の開花や鳥の渡りなど、季節の進むのにあわせて生きものたちは動いている。著者は東南アジアの研究で、見なれない植物の同定に苦労したり、1年ではなく数年から10年の周期や、あるいはほかの植物と同調して開花する植物たちのフェノロジーの解明にとりくんでいく。また、温暖化という長期的な変動を把握するために、植物園の過去の開花や標本の記録の解析にもかかわる。フェノロジーを主題としながら、著者の経験してきた野外植物調査や分類学や標本、サイエンスコミュニケ―ションについても記述が詳しく、研究をとりかこむいろいろな分野について知ることができる。

 お薦め度:★★★  対象:フェノロジーとは何?という人、研究とはどういうことをすることが知りたい人
【萩野哲 20250206】
●「植物の季節を科学する」永瀬藍著、共立出版

 生物が見せる現象や行動は季節的な周期性を示す。フェノロジーとはこのような季節変化に応じた生物のイベント(植物では発芽・開花・結実・展葉・落葉など)を調べる学問であり、著者は植物の特に開花のフェノロジーを専門とする。植物は、気温・日長・降雨量などの気象条件の変化に反応してイベントを起こすが、どれが主要因かは種によって異なる。そしてその要因が変化するとイベントも変化する。その変化はその植物種以外の関係する生物群にも影響が及ぶことになる。

 お薦め度:★★  対象:どのような歴史的過程を経て現在の自然保護が発達してきたか知りたい人
【和田岳 20250209】
●「植物の季節を科学する」永瀬藍著、共立出版

 副題にあるようにフェノロジー研究の紹介の一冊。第1章のフェノロジーとはさておき、第2章は著者が九州大学構内で調べた開花フェノロジーの話、第3章と第4章は著者が参加した東南アジアでの調査の話。第5章では、過去の日本の植物の開花フェノロジーをハーバリウムを活用して調べる。すなわち標本の存在意義の話。第6章は研究者のアウトリーチで、第7章は研究者を目指す人へのメッセージ。
 フェノロジー研究とは何かはある程度伝わる内容だけど、あまりにも著者の経験したことに限定されていて、これでフェノロジー研究の全体像を知ったことになるか不安になる。

 お薦め度:★★★  対象:フェノロジーとは何か、あるいはハーバリウムの意義を知りたい人
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