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本の紹介「幸せな動物園」
「幸せな動物園」旭川市旭山動物園監修、ブルース・インターアクションズ、2005年9月、ISBN4-86020-133-7、1600円+税
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【釋知恵子 20060212】【公開用】
●「幸せな動物園」旭川市旭山動物園監修、ブルース・インターアクションズ
第一印象は、おしゃれ。本のデザイン、写真など今風なところが、他の旭山動物園本とは一線を画すところだろうか。写真やイラストがふんだんに使われ、旭山動物園の施設がどのように計画され、作られ、現在どうあるのかということが、目で見て理解できる。オープンした施設順に並んでいることから、様々な人を巻き込んで、盛り上がっていった様子がよくわかる。物作りにおいて、予算と制約があるのは当然。その中でも妥協できない点を守りつつ、最善を尽くしていく物作りの姿勢には学ぶところが多い。と、なんのかんのいっても、読後は「行ってみたい!」の一言。動物を毎日見ている動物園の職員が、こんなのあったらいいなと思い描いた旭山動物園。そこでは来園者たちは動物たちを飽きさせないネコジャラシのような存在になるらしい。是非、ネコジャラシになりに行きたい。こう思わせるのも、この本の力だろうか。
お薦め度:★★★★ 対象:物作りに携わる人に
【瀧端真理子 20051102】
●「幸せな動物園」旭川市旭山動物園監修、ブルース・インターアクションズ
動物園の動物を見て、つまらないと感じたり、可哀想と心の内でつぶやいた人は多いはず・・・そんな感想にくやしい思いをしていたのは、動物のいちばん近くにいる人たち・・・この本は、こんな風に始まります。動物の本来の能力や自然な動きを引き出せれば誰もが感動するはず。こう考えた旭山動物園の人たちは、97年から、リスタートにとりかかかります。
たとえば、「もうじゅう館」。ガラスの前に来てもらう<トラ編>。日中トラの好む日陰の位置をガラス張りに。寝ているヒョウを人が下から眺められるように、見上げた人がドキッとする高さに、しかも、ここは網にしたのがこだわり。写真で見ても、金網からはみ出ている、ヒョウのふさふさの毛は、思わずなでてみたい感じです。
こうして来館者は急増。来館者増のための改革ではなく、自分たちは何をしたいかに徹底的にこだわった改革。巻末には、現園長の小菅さんが、91年から原案を話し続けた「旭山動物園基本計画」が掲載されています。イラスト、写真、デザイン、ほどよく軽量な仕上がり。本づくりのセンスも抜群です。
お薦め度:★★★★ 対象:今の仕事に行き詰まりを感じている人に
【萩野 哲 20060202】
●「幸せな動物園」旭川市旭山動物園監修、ブルース・インターアクションズ
最近本屋に行って動物書コーナーでやたら目に付くのが旭山動物園関係の本である。しかしなぜ特定の動物園だけでこんな多数の本が出るのか?なぜか知ろうとして読むとしてもこれだけあると選ぶのも大変である。そんな中、読書サークルで課題本に挙げられたのが本書であり(旭山動物園関係で選ばれたのは2冊目か)、やっと読む機会に恵まれた。旭山動物園には、ここしかいないような珍しい動物はいない。それで大変な人気を得る(改装前に年平均40万人前後であった入園者数は今では120万人突破!!)ためには他の動物園にはない様々な工夫がなされているに違いないとは予想していたが、やはりそうであったことが、本書を読んで理解できた。それは、限られた予算とスペースで、観客と動物双方が満足できるよう入念に考えて設計されていることであった。例えば、観客の視点からは、ヒョウなどの動物は大抵寝ているだけであまり面白みがないのが難点であるが、旭山ではいかに寝ているヒョウを飽きさせずに見せるかを考えている。また、動物側の視点からは、観客の歩く位置を動物の目線に合わせて動物の好奇心をより満足させ、動物がその能力をより有効発揮できるよう工夫している(本書ではネコジャラシ効果と呼んでいる)。旭山動物園関係の本はこの1冊しか読んでいないので他の本との比較はできないが、本書の読者は、本書のタイトル「幸せな動物園」が、観客はもちろん、飼育されている動物からもそのように呼べることに気付かれることと思う。でもやっぱり、動物園は本で読むより実際に行ってみたいな、というのが本音である。
お薦め度: 対象:
【六車恭子 20060202】
●「幸せな動物園」旭川市旭山動物園監修、ブルース・インターアクションズ
閉園もありえた最北の旭山動物園の復活は従業員の夢見る力から生まれた。危機の中で所員が議論を重ねて描きためた14枚のスケッチ絵は彼らの理想のシンボルそのものになったようだ。
彼らが仕掛けたワナにはまったのは近辺の住人たちばかりでなく全国各地から巡礼参りのように訪れるという。なぜこれほどまでに魅するのか?この本はこれへの解答のために編まれたようですらある。本で宣伝するというのもなかなかしゃれている。野生の美しさを引き出すノウハウは日々の飼育現場から拾って来たものだ。愛情と工夫のひねりがドキドキをうむのだろうか。「アザラシ目線」があるホッキョクグマ館、アザラシをスターにする円柱がある舘、観客も動物の行動を誘う道具立ての一つという発想も秀逸だ。
お薦め度:★★★ 対象:社会教育の現場で活動している人、したい人
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