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本の紹介「そもそも島に進化あり」

「そもそも島に進化あり」川上和人著、技術評論社、2016年7月、ISBN978-4-7741-8250-6、1880円+税


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【西本由佳 20161023】【公開用】
●「そもそも島に進化あり」川上和人著、技術評論社

 序文はとてもふざけているが、本文はけっこうまじめ。しかし、まじめそうな書き方のなかに、いきなり空想上の産物が混ざっていたりするので、油断できない。漢字が読めるからといって、一般常識(というか小説とか映画の知識)のないこどもが読むのは勧めにくい。書き方はともかく、内容はごくまじめな、島という環境の特徴と生態系のお話し。海という障壁をこえ、限られた資源しかない土地に定着するまでのサバイバルと、競争相手や捕食者の少ない環境での進化、そしてそこへの人の介在した(というか人を含む)外来種の侵入による危機。島という環境に育まれた生きものたちの魅力と、それをいま保つため、取り戻すために必要な努力に、考えさせられた。

 お薦め度:★★★  対象:一般常識のある人
【森住奈穂 20170224】
●「そもそも島に進化あり」川上和人著、技術評論社

 前著『鳥類学者無謀にも恐竜を語る』を楽しく読んだので、本書も期待を持って読み進めた。そもそもなぜ島なのか。まえがきで著者は語る。「だって、島と鳥は字が似ているのですもの」。ほんまや〜。前著同様おふざけ多め(イラストや脚注がまた楽しい)ながら、島は著者の研究フィールドであるから、愛たっぷりに概観されており楽しく読める。タイトルにある通り、特に進化にページが割かれ(島の「し」は、進化の「し」)、実験場さながらに、生れては滅ぶ島の生物進化が紹介される。

 お薦め度:★★★★  対象:島の生きものの進化を楽しく知りたいひと
【和田岳 20161028】
●「そもそも島に進化あり」川上和人著、技術評論社

 『鳥類学者 無謀にも恐竜を語る』の著者が、今度は大胆にも島について、島の生き物について語った一冊。例によって、おふざけが盛りだくさん。おふざけに紛れて本論を見失いそうになるので、要注意。
 内容は、第1章で島とは何かを紹介し、第2章で生き物がどうやって島に到達するかを語り、第3章で島での生き物の暮らしを考え、タイトルにある通り、島での進化についての話が投入される。第4章で島での生き物の絶滅の話。ふざけている振りして、構成はいたって普通。内容もいたってまっとう。著者の博学ぶりは随所に発揮されているが、これまたおふざけに紛れてしまってるかもしれない。
 第4章では、外来生物問題に熱が入り、後半になると、おふざけを忘れてしごくまっとうな事が書かれていて、この本の中では異色のパートになっている。ここは必読。

 お薦め度:★★★  対象:島の生物学、外来生物問題に興味があれば、あるいは川上節が好きなら
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