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本の紹介「そして恐竜は鳥になった」
「そして恐竜は鳥になった 最新研究で迫る恐竜進化の謎」小林快次監修・土屋健著、誠文堂新光社、2013年7月、ISBN978-4-416-11365-3、1500円+税
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【萩野哲 20131130】【公開用】
●「そして恐竜は鳥になった」土屋健著、誠文堂新光社
「鳥は恐竜である」との説は広く受け入れられるようになった。それはシノサウロプテリクスはじめ数多くの羽毛を持った恐竜が発見され、デイノニクスや始祖鳥などの研究も進んだ成果である。本書は鳥を恐竜の1グループと認識するため、まず恐竜の定義をきちんと説明し、食性、子育てなどの観点から、恐竜としての鳥の生活を復元している。鳥類に至る獣脚類の系統樹を見ると、卵の形や殻の穴の数の変化が徐々に起っていたことがわかる。化石に残りにくい羽毛はどの段階から発生したのか? そもそも羽毛の役割は何なのか? 4つの仮説を検証し、「繁殖行動のため」(更に抱卵も)がもっともらしいと自説を展開する。そして羽毛の生えた翼と鳥類の特徴である飛翔の始まりについても検証する。鳥類が繁栄することができる環境についても言及している。そうか!時代をおってだんだん鳥らしいヤツが進化してきたんだ! ここまではよいけれど、羽毛恐竜よりも始祖鳥が先に出現しているパラドックスは??? まあ、そのうち解決されるのでは?
お薦め度:★★★ 対象:恐竜としての鳥に興味以上の興味がある人
【冨永則子 20140204】
●「そして恐竜は鳥になった」土屋健著、誠文堂新光社
2013年現在の最先端の恐竜研究や調査のデータをもとに、「食べもの」「子育て」「翼」の3つの視点で恐竜から鳥への進化を解説している。
冒頭の「はじめに」は、恐竜学で今最も人気のある気鋭の研究者といわれる北海道大学総合博物館准教授の小林快次氏による文章のようだが、それ以外の本文その他の執筆は土屋健氏なのだろう。小林先生がどこまで校了しているのか不明だが、時々、日本語の表現に引っかかる。例えば、『植物食をやる』とあるが『植物食をする』の方が抵抗がない。また、『折り畳み傘のことを「コウモリ傘」とよぶことがある』と書いているが、“コウモリ傘”とは和傘に対して西洋風の傘のことであり、折り畳み傘に特定されない。決定的なのは『「草」とは、一般にイネ科の植物をさす単語だ』と断定していること。広辞苑を引いても、「草」とは“木質があまり発達しないで軟らかい茎を有する植物。草本”とあり、どこにも“イネ科”と限定されていない。
ご本人も「言葉は正確に」と書いておられるが、私にはいちいち引っかかる表現が散見する。そもそも、本文5ページ目でつまずいた。『「恐竜」という場合には、「鳥類以外の恐竜」を指すことにする。ただし、忘れないで欲しいのは鳥類は恐竜、とくに肉食恐竜の多い獣脚類の一部だということである』鳥類は恐竜だけど、恐竜は鳥類以外って?!
本書は、小学校高学年以上を読者対象にしているようだが、イマドキの恐竜好きの子どもたちには通じるニホンゴなのだろうか?
お薦め度:★★ 対象:最新の恐竜研究が知りたい人に
【和田岳 20131213】
●「そして恐竜は鳥になった」土屋健著、誠文堂新光社
恐竜研究者監修のもと、恐竜から鳥への進化を紹介した一冊。副題の最新研究というのは偽りなく、2012年の成果まで盛り込まれている。
歯の形や胃石に基づく恐竜の食性。恐竜の卵と子育て、羽毛を持った恐竜と羽根の進化、飛行の起源と鳥の由来。章ごとにテーマを変えて、恐竜がいかに鳥に通じる性質を持っていたかが紹介される。
胃石があれば植物食。子育てをしていた恐竜がいた。恐竜全体に羽根はさほど珍しくなかった。翼の起源は繁殖行動のためというのが一番有力などなど。いまや鳥は恐竜の一群と考えられていることは知っていても、最新の恐竜の話にはきっと驚くことがあるに違いない。
お薦め度:★★★ 対象:恐竜研究の最前線が知りたければ
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