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本の紹介「魂の森を行け」
「魂の森を行け 3000万本の木を植えた男」一志治夫著、新潮文庫、2006年11月、ISBN4-10-142722-4、438円+税
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【加納康嗣 20061127】
●「魂の森を行け」一志治夫著、新潮文庫
火の玉のように活躍する植物生態学者宮脇昭博士の評伝である。博士は潜在自然植生理論を打ち立てたドイツのチュクセンに師事し植物社会学を学ぶ。潜在自然植生とは、人間の干渉を停止したと仮定したとき現在の土地条件が支持しえる自然植生のことである。「原植生」と「現在植生」の2つの植生概念しかなかった所に加えられた新たな概念である。この理論に基づき多くの協力者を得ながら日本全国の植生調査を行い「日本植生誌」10巻を刊行する。また、植樹理論として現地植生調査と生態学的理論に基づき土地本来の森林回復・再生法を確立する。それは、宮脇方式とも呼ばれ、端的に言うと「ふるさとに木によるふるさとの森の再生」である。混植・密植型植樹によって多層群落を作り再生させる方式であるが、マレーシアのサラワク州ビンツルの熱帯林では本来自然遷移では300-500年掛かるとされていた森林を20-30年で再生可能なことを明らかにした。
「目で見、匂いを嗅ぎ、なめて、触って調べろ」「神は貧しきものにも、王様にも同じように24時間365日を与えている」「過去も夢、未来も夢、今この瞬間生きることだけは事実」など、本書の目次には宮脇の行動的な現実感のあふれた言葉が使われている。世界的な規模で森林植樹に活躍している宮脇の情熱と狂気に少しだけでも当てられたい気がする。
お薦め度:★★★ 対象:自然保護に関心がある方
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