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本の紹介「天敵なんてこわくない」
「天敵なんてこわくない 虫たちの生き残り戦略」西田隆義著、八坂書房、2008年6月、ISBN978-4-89694-909-4、2000円+税
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【和田岳 20081030】【公開用】
●「天敵なんてこわくない」西田隆義著、八坂書房
京都大学の昆虫研究室を率いる著者が、この約15年ほどの間に同じ研究室の仲間と一緒に行ってきた研究を紹介した本。被食者が捕食者の影響をどのように受けているか、とくに捕食の非致死的効果に着目した研究が展開される。紹介される研究は、ダイフウシホシカメムシとその捕食者、ヤノネカイガラムシとその寄生蜂、田んぼのバッタと捕食者のカエル・鳥。捕食者の存在が、被食者の行動にいかに影響を与えるかが明らかになってくる。
ここで紹介されている研究は、世界的に見てもオリジナリティが高い。それでいて、身近に見られるテーマである。生態学は、アイデアさえあれば、身近でこれほど面白い研究が可能だということがわかる。惜しむらくは、専門家にも興味を持ってもらえる内容の一方で、一般向けにはちょっと難しいかなというところ。アイデアに満ちた刺激的な本だが、普及書としての評価は微妙。
お薦め度:★★★ 対象:身近な動物の暮らしに興味のある人、どっちかと言えば生態学を少しはかじったことがある人
【萩野哲 20081021】
●「天敵なんてこわくない」西田隆義著、八坂書房
生態学の大きな命題のひとつに、生物の数の変動要因が何か、という問題があった。そして膨大な観察の結果、食う者と食われる者とのバランスはその要因ではないと考えられてきた。しかし本当にそうだろうか?と著者は考えた。 本書は、著者らがその検証のため実施した実験の記録である。たいへん大きな命題なので、これらの事例で果たしてどうこう言えるのか、ということは脇に置いといて、ヒシバッタ類の捕食回避策の実験はたいへん興味深かった。余談であるが、野生生物を鳥に食わせる実験が残酷で倫理規定に反するため研究論文として受理できない、との国際基準は、同様の目にあった者として同情やら驚きやらでいっぱいであった。
お薦め度:★★★ 対象:虫たちがいかに生きているか、その生活の一端を垣間見たい人
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