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本の紹介「トチの木の1年」
「トチの木の1年」太田威著、福音館書店、2012年1月、ISBN978-4-8340-2696-2、1200円+税
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【西村寿雄 20120824】【公開用】
●「トチの木の1年」太田威著、福音館書店
ページをめくるとまずは天にすっと伸びる早春のトチの木の姿が目に入る。
「春まだあさい、天気のいい日に、トチの木にあいに来ました。…」
と話が始まる。枝先には萌える葉、地面には早春の花、カタクリやキクザキイチゲが咲いている。やがて、若葉の芽がすくすくとのびて葉の間からは、でくの坊のような花のつぼみが伸びてくる。初夏になるとトチの白い花穂があちこちでいっせいに搭状につきだす。幻想的な風景である。
花のあまいにおいにさそわれて、たくさんのハチや虫たちがやってくる。巣箱から蜂蜜をとっているハチ屋さんが出てくる。琥珀色のあまいトチ蜜は人気の蜂蜜だ。新巻(あらまき)づくりの話もある。川魚に塩をまぶしてトチの葉でくるむと、くさりにくくなる。トチの葉は村の保存食に一役買っている。秋になると大きなトチの実が落ちる。トチの実は古来から大切な食糧となってきた。今も、トチもちとして人々に親しまれている。
お薦め度:★★★ 対象:小学生中学年から、里山で生きる人に興味のある人
【釋知恵子 20120824】
●「トチの木の1年」太田威著、福音館書店
トチの木は、四季を通して人に恵みを与えてくれる木。夏の初めに咲く花は、ハチミツを、大きな葉は、川の魚を包み、保存するために使われる。秋の実りは、渋みを抜いて、トチ餅に。昔々からトチは人の近くにあり、暮らしにあった。非常にオーソドックスで堅固な作りの本。びっくりするような写真はないし、とてもいい文章がついているわけでもない。でも、きちんと作られているなという印象。教科書的に学校の先生が使ったらどうだろう。
お薦め度:★★★ 対象:植物に興味がある小学生と学校の先生
【六車恭子 20120824】
●「トチの木の1年」太田威著、福音館書店
表紙は天然記念物の屋久杉を思わせるアングルでトチの木がそびえる。
春にはトチ蜜を採取する巣箱がおかれ、また大きなトチの葉に包んだ新巻作りは早春の頃、秋にはトチの実拾いに山里にはいる。拾ったトチの実を灰汁抜きしてトチもちにする。トチ林の林床にはカタクリやキクザキイチゲが咲き、トチの実は小動物たちの冬の食料にもなるのだ。
里山のありふれたトチの木の恵みを四季を通じて紹介する写真家の静かな情熱を写し取っている写真絵本だ。
お薦め度:★★★ 対象:田舎暮らしにぎっしり詰まっているものにあこがれている人
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