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本の紹介「都会にすむセミたち」
「都会にすむセミたち」沼田英治・初宿成彦著、海遊舎、2007年7月、ISBN4-905930-39-1、1600円+税
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【和田岳 20071018】【公開用】
●「都会にすむセミたち」沼田英治・初宿成彦著、海遊舎
著者の二人は、大阪のクマゼミを中心に、様々な角度からセミの調査をしてきた。その調査結果の集大成。現在日本語で読めるセミの暮らしの解説本は他にないので、ワン&オンリーの一冊。
10年以上にわたって続けられている抜け殻調査、セミにマーキングしての移動距離・寿命の調査、網室でセミを飼っての生活史調査など、市民参加で行われたさまざまな調査結果が紹介される。クマゼミは、ものすごく身近な虫であるのに、基本的な生態がどれほどわかっていないかがよくわかり、それをどこまで解明できたのかもよくわかる。
紹介された調査の多くは、少しの時間をかければ、お金も道具もさほどかからずに誰でもできるものばかり。この本を読んで興味を持ったら、ぜひ自分でもやってみよう!
お薦め度:★★★ 対象:セミに少しでも興味があれば
【加納康嗣 20070815】
●「都会にすむセミたち」沼田英治・初宿成彦著、海遊舎
セミ特別展の実質的な「展示解説」である。会期1週間前に訪ねたとき、ガランとした展示室に不安を感じたが、初宿さんがいやに落ち着いていたのがこれで解った。非常に読みやすく、わかりやすい。それでも内容は決して軽いものではなく、長い研究や観察の積み上げと、友の会の活動があってこそできあがった重厚さを感じる。面白すぎるセミ展の感動が、又いっそうわき上がってきた。初宿さん!お見事!すごい!
都会と温暖化にセミがどう反応したか。未来を探る指標としてのセミにいっそう親近感をもった。ただ一つ気になることは、東京など都市への侵入に、「植樹」が影響しているというNHKの放送内容と相違していることである。これにどんな答えが用意されているか楽しみである。
お薦め度:★★★★ 対象:自然に関心を持つ人も、虫の嫌いな人も
【釋知恵子 20071017】
●「都会にすむセミたち」沼田英治・初宿成彦著、海遊舎
生き物の不思議に迫るためには、仮説を立て、それを立証するための調査が必要。科学する道のりは、地道な努力で成り立っているんだなあということがよくわかる。セミの一生を調べるために、巨大ケージでセミの飼育を行い、毎年、土を掘り返して微小な幼虫を探すなんて、かなり気の遠くなる作業でないですか。物事の不思議を科学する研究者の探究心を感じ、科学する楽しさを感じれる本。高校生や大学生に是非読んでもらいたい。
お薦め度:★★★ 対象:物事の不思議の解明に興味のある人
【六車恭子 20070816】
●「都会にすむセミたち」沼田英治・初宿成彦著、海遊舎
夏の風物誌・セミたちが脚光を浴びたことは少ない。暑い夏をことさら熱く鳴き続ける彼らを主役にした本がやっと登場した。
優雅ないい虫たちはさっさと都会から消えていったのに、なぜか大都会で繁栄するクマゼミ。夏の到来とともに地上に出現し真夏日に愛を育み、一夏の命を終える。6年とも7年とも言われた地中生活をへて私たちの前で鳴き交わすのはせいぜい長くても1ヶ月のはかない命だ。安全な地下生活に入る前の一齢幼虫は究極の死の洗礼が待っている。1〜2ミリの幼虫を待ち受ける大地に至る門は狭き門なのだ。生態学的、生理学的研究、都市公園で14年にわたるセミの抜け殻調査の記録、網室でのクマゼミの飼育記録などから、都会で繁栄を極めるクマゼミの謎にせまる好著。この夏、クマゼミする! みじかな自然観察、研究への入門書になりそう。
お薦め度:★★★ 対象:近所に児童公園か神社かお寺のある人ならだれでも
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