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本の紹介「となりにすんでるクマのこと」

「となりにすんでるクマのこと」菊谷詩子著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年11月号、2024年11月、736円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
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【里井敬 20241219】
●「となりにすんでるクマのこと」菊谷詩子著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年11月号

 軽井沢町は町のまわりには森が広がり、いろいろな野鳥や動物たちがくらしています。ミズナラの木の上に大きな鳥の巣のようなものがあります。これはクマがミズナラのドングリを食べるときに作った「クマだな」です。身近なところにクマはすんでいるのです。
 軽井沢では人とクマの両方を守るためにさまざまな取り組みをしています。人と出会わないように、クマチームが花火や大声で脅かしたり、ベアドッグで山奥へ追い払ったりします。クマはそれぞれ性格が違うのでそれに合った対応をします。しかし、中には共存が難しいと判断されることがあり、駆除されてしまうこともあります。
 四季のクマの生活、出会わないように、または出会った時の注意が詳しくかかれています。

 お薦め度:★★★  対象:クマに興味はあるけれど、出会わないようにしたいと思っている人
【冨永則子 20241218】
●「となりにすんでるクマのこと」菊谷詩子著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年11月号

 著者が住む軽井沢は森の中に別荘が点在し、森と人里との境界を引くのがとても難しいところで、クマとの遭遇がいつ起こってもおかしくない。そこで、軽井沢にはクマと人間を守るために専門のクマチームがある。町内の小学校ではクマチームによるクマ学習が開催され、子どもたちは6年間で野生生物と共存していくことを学んでいく。その取り組みを全国の子どもたちにも届けたいという思いで本著が作られた。コノカ、ジュンナ、ヒッコミ、サワコ、シノブ、ニトロ…個体認識できると、それぞれのクマの個性が分かる。直ぐ側にいるクマを知り、正しく恐れて、正しく距離を取り、クマと人間が末永く共存していけますように。

 お薦め度:★★★★  対象:スーパーに入ったクマ…かわいそうと思う人に
【西村寿雄 20241213】
●「となりにすんでるクマのこと」菊谷詩子著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年11月号

 著者は幼少期にケニアとタンザニアで過ごし動物学者をめざしたがサイエンスイラストレーションを学んだ特異な人。それだけにこの本のテーマはお手のもの。近年のツキノワグマとヒトとのつきあい方についてくわしく書いている。話は近年軽井沢でクマが別荘地に出没するようになったことから始まる。その軽井沢で安易にクマを射殺しないですむように活動している団体の話である。クマをケージに捕らまえ発信器を着けて山に帰したり、丈夫な柵を作ったり、クマには特別にほえるベアドックの育成など、クマが人里の近くに来ないような取り組みをいくつも紹介している。

 お薦め度:★★★  対象:なんとかクマを射殺しないですむよう願っている人
【和田岳 20241219】
●「となりにすんでるクマのこと」菊谷詩子著、福音館書店たくさんのふしぎ2024年11月号

 軽井沢を舞台に、ツキノワグマと人の共存の一つのモデルケースが紹介される。主人公はコノカと名付けられた子連れのメスクマと、クマチームの人たちとベアドッグ。著者は、たびたびクマチームに同行して、クマ対策と、人の近くで暮らすクマの実態を学んでいく。
 秋、樹上のクマ棚から話は始まる。冬眠穴、出産、行動圏、夏の果実食、秋のドングリ食。ツキノワグマの生態を一通り紹介する合間に、軽井沢のクマ対策が紹介されていく。里に来るクマを捕獲して、個体識別の上、学習放獣。里に近づいた個体の追い払い。止むを得ない場合、駆除。クマが街に出るようになった原因と対策。
 現在の日本で、ツキノワグマとの共存を考える上で、必要な情報が一通り盛り込まれている。文章だけでなく、調査結果に基づいたイラストの情報量も多い。絵がとても上手で、クマもイヌも個体を区別して描かれている。そして、背景にさりげなく描かれている植物や昆虫、鳥の質が高い。最後のページは、ヤドリギに来てるヒレンジャク。

 お薦め度:★★★★  対象:クマに関心のある人、野生動物と人の共存が気になる人
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