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本の紹介「鳥が人類を変えた」

「鳥が人類を変えた 世界の歴史をつくった10種類」スティーヴン・モス著、河出書房新社、2024年2月、ISBN978-4-309-22913-3、2900円+税


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【西本由佳 20240623】【公開用】
●「鳥が人類を変えた」スティーヴン・モス著、河出書房新社

 10種の鳥を切り口にして人間の愚かさを書いた本、というとなんだけど、そんな感想を持った。「不吉な」ワタリガラス、帰巣本能を買われて伝令として使われたハト、ひどい方法で殺されて楽しく消費されるシチメンチョウ(ニワトリも大差はないだろう)、科学的に記録される間もなく絶滅したドードー、進化を現在進行形で見せてくれたダーウィンフィンチ、ウのフンをめぐる悲惨な歴史、羽飾りのために殺されたユキコサギなどの鳥たちと環境保全家、残虐さの旗印とされたハクトウワシ、独裁者の気まぐれと集団ヒステリーで大量虐殺されたスズメ、気候変動により絶滅の危機にあるコウテイペンギン。読後感のさわやかな本ではない。だけど、いま自分が普通にすごしていることで、他の生きものたちをひどく傷つけてはいないか考えるために読んでおいた方がいいのかなと思う。

 お薦め度:★★★  対象:鳥と人のかかわりについて知りたい人
【萩野哲 20240517】
●「鳥が人類を変えた」スティーヴン・モス著、河出書房新社

 ワタリガラス:創造神話に登場する深淵なる知性と独立心を持ったヒトと対等以上の存在
 ハト:伝書という人にはない特技を持つが故に人の戦争に駆り出された気の毒な存在
 シチメンチョウ:トルコ出身ではないが、宴の中心に据えられる質・量ともに称賛された存在
 ドードー:絶滅が認識される前に絶滅した故に事実が知られていないが超有名な存在
 ダーウィンフィンチ類:ダーウィン伝説の経緯と目の当たりの進化を目撃できる存在
 グアナイウ:ハイインプットハイアウトプット農法で世界を変えたグアノを遺産として残した存在
 ユキコサギ:帽子の羽飾りの流行によって絶滅されかけた後、保護運動に転じられた存在
 ハクトウワシ:権力の象徴として選択されてきた反面、決して相応しく扱われなかった存在
 スズメ:毛沢東が殺戮した結果、飢饉というしっぺ返しがあることを思い知らせた存在
 コウテイペンギン:気候危機に直面して絶滅が懸念される、ヒトの未来をも予見させる存在
 これらの鳥は皆、ヒトによって翻弄され、ヒトを翻弄し、繰り返す歴史を顧みる材料である。

 お薦め度:★★★  対象:ヒトに眼をつけられた鳥類の運命を知り、ヒトの運命も考えたい人
【和田岳 20240628】
●「鳥が人類を変えた」スティーヴン・モス著、河出書房新社

 10種類の鳥をとりあげ、人類との関わりを紹介する。が、鳥が人類を変えたというより、人類が鳥に迷惑をかけた話が中心。
 ワタリガラスは神話に登場。あがめられたり迫害されたり。古い家禽であるハトは、伝書鳩として戦争の帰趨に関係。シチメンチョウは、早くにヨーロッパに伝わり、一時は貴重な食糧源。ドードーは、一番有名な絶滅動物の一つ。ダーウィンフィンチ類は、ダーウィンの進化論に影響を与えた、という間違った評判で有名。グアナイウはグアノの生産者。多くの悲劇と多大の富を産み、なにより農業のあり方を一変させた。ユキコサギは、羽根を狙って乱獲され絶滅危惧種に、そして保護運動のきっかけに。ハクトウワシ、かつては第三帝国、いまはアメリカ合衆国の象徴。スズメ、中国での大虐殺としっぺ返し。コウテイペンギン、地球温暖化のシンボル。
 人類を変えた鳥は、ハト、シチメンチョウ、グアナイウ、ユキコサギくらいかなぁ。著者は、むしろ鳥が人間による迷惑を被った話を語りたかった様子。

 お薦め度:★★★  対象:人間社会と鳥との関わり、とくに鳥がどれだけ迷惑を被ってきたかを知りたい人
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