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本の紹介「闘蟋」

「闘蟋 中国のコオロギ文化」瀬川千秋著、大修館書店、2002年10月、ISBN4-469-23185-1、1800円+税


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【石田惣 20041022】【公開用】
●「闘蟋」瀬川千秋著、大修館書店

 中国には闘蟋(とうしつ)という、コオロギの雄どうしを戦わせる遊びが古くからあ り、その歴史は1200年以上にもおよびます。闘蟋の文化に魅かれた著者は、中国 に通いつめ、あげくその道の老師に弟子入りするというフィールドワークにより、そ の風俗を臨場感たっぷりに描きます。
 最強のコオロギを手中にするがため、採集、飼育、トレーニング、果てはドーピング に至る、中国の男達の培ってきたマニュアル群。近代科学には及びも(思いも?)つ かない、コオロギの生態への深い洞察です。動物民俗学として完成度の高い一冊。

 お薦め度:★★★★  対象:秋の夜長に中国の路地裏をのぞいてみたい人

【六車恭子 20041107】
●「闘蟋」瀬川千秋著、大修館書店

 日本の大人たちをも狂わせるクワガタ虫、そのむし文化をうわまわるものが海の向こう中国にはあるらしい。著者は「ラストエンペラー」で皇帝の玉座に隠された葫蘆の印象的な描写に強く牽かれ、ついにこのような1200年に及ぶ中国の男たちに受け継がれた歴史的なコウロギに託した情熱の鉱脈を掘り当てた。
 誰もが昆虫少年であった頃、虫籠の中で昼間採集した虫たちがバトルを演じ生き残っている最後の1疋を知っていた。闘蟋とはコウロギを闘わせて「虫王」を決めるひと秋の男たちの熱い戦いなのだ。公明正大であるというよりはどこか耽美的な秘密の駆け引きが飼い主たちの明暗をわける。手のひらのちっぽけな虫のための虫グッズが広大な中国の深淵をかいま見せてくれる。著者が何度も中国を訪れて足でかせいだもう一つの中国の華麗にして摩訶不思議な文化誌といえそうだ。

 お薦め度:★★★  対象:虫の文化誌をひもとく快楽に身を委ねてみたい人

【和田岳 20040911】
●「闘蟋」瀬川千秋著、大修館書店

 中国では、闘牛や闘犬ならぬ、コオロギを闘わせる闘蟋というものがある。一部の少数のマニアの遊びかと思いきや、これはかなり一般的なものらしい。夏になるとコオロギを捕まえ、あるいは買ってきて、飼育し、秋になると闘わせる。唐代の頃から、少なからぬ人がかなりの時間をコオロギに捧げ、国を滅ぼしたり、妻に逃げられたりしているらしい。そんな中国の闘蟋という文化を、日本人ライターが名人に弟子入りまでして、何年もかけて取材して紹介した本。
 とにかく、コオロギにはまっている人達の生態がおもしろい。“いいコオロギ”を求めて名産地に人が殺到したり、コオロギに秘伝の餌を与えたり。朝からコオロギの世話に、毎日毎日精を出したり。コオロギ飼育の道具類も凝りに凝っていて、虫の道具のコレクションを見るだけでも楽しい。

 お薦め度:★★★  対象:理解できないマニアの世界に興味のある人

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