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本の紹介「ツバメのせかい」

「ツバメのせかい」長谷川克著、緑書房、2021年6月、ISBN978-4-89531-565-4、1800円+税


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【和田岳 20211022】【公開用】
●「ツバメのせかい」長谷川克著、緑書房

 「ツバメのひみつ」に続く第2弾。はじめに、この本ではツバメが主観的に感じている世界を紹介する。ツバメの主観であって、著者や人間の主観ではないことに注意。ただ、最後の第6章では、著者の主観的なツバメ観が語られる。
 第1章は聴覚、第2章は視覚と、ツバメのみならず鳥の感覚世界の話。ツバメの可聴域が人間より狭いって知ってた? 第3章は他種との、第4章はツバメ同士の、相互関係の話。サンショクツバメの集団繁殖地の周りでは花の授粉率が下がるとか、ヒナは親が持ってきた餌を譲り合ったりするとか、いろいろ面白い話が出てくる。第5章は、渡りの話。アルゼンチンには、南半球で繁殖して、北半球で越冬する個体群がいるらしい。
 とまあ、「ツバメのひみつ」と同じく面白い研究成果がいっぱい紹介される。「ツバメのひみつ」は読んで無くても大丈夫。

 お薦め度:★★★  対象:鳥が見聞きしている世界、ツバメが暮らしている世界に興味がある人
【冨永則子 20210921】
●「ツバメのせかい」長谷川克著、緑書房

 ツバメは都会暮らしの私たちにとっても比較的身近な渡り鳥である。ツバメたちがどのように世界を見て、感じとっているか、同種や他種の生き物たちとどのように関わっているか、何より“渡り鳥”としての生き方がどのようなものであるかを科学的に分析していく。身近に生きるツバメとはいえ、当然、その世界観は異なるものと思っていたが、個体差、格差、社会構造など、程度の差こそあれ、案外私たちヒト世界と共通していたりする。ツバメたちも自然環境と社会環境の中でもがいているのだ。バードK上ほどではないが、喩え話やダジャレがたびたび出てくる。ただ、かわいらしいのは、その度に(だじゃれです)と必ず注釈をつけるところ。まあ、それがなければ「たまたまかな?」とスルーしたかも… 先に出版された『ツバメのひみつ』と合わせて読むと、よりツバメの世界が理解される。

 お薦め度:★★★  対象:身近な渡り鳥ツバメをより深く知りたい人に
【西村寿雄 20211020】
●「ツバメのせかい」長谷川克著、緑書房

 前著『ツバメのひみつ』に次ぐ二冊目。はじめに「彼ら自身の生き方を紹介することを目的としています。」とか「彼らがどういうふうに世界を見て、感じ取っているか・・」とか書かれているので、たんにツバメの生態、形態を書いている本とは違う面があっておもしろい。ただ、それだけに少し話が煩雑になっている。また、「考えられています。」とか「報告があります。」「ようですが・・」の記述が多く、決めきれない側面も多い。編集にいま一つ工夫がいる。

 お薦め度:★★★  対象:ツバメの行動に関心ある人
【萩野哲 20210912】
●「ツバメのせかい」長谷川克著、緑書房

 第1,2章は聴覚と視覚。まずはツバメに限らず鳥類の視覚に驚愕。クリアな視界を実現する寄生虫様ペクテン、拡大鏡様フォビア、LEDが点滅して見えるような動体視力などなど、哺乳類と比較してどう見えているのか、妄想が膨らむ。眼の常識が変わった。主にツバメ情報に特化した第3-5章は異種との競争、繁殖および渡りについてやや詳細に語っている。競争や捕食関係は大変興味深いが、最も強い印象を受けたのは寄生虫。個人的に野鳥を手づかみしたことはないが、ダニやシラミが手に上ってくる感触は想像できる。千や万単位の寄生虫が普通な鳥で、派手な羽毛をまとい、それで健康をアピールする行動が進化した可能性は尤もだ。第6章では巣材として土を利用するツバメの特殊性を知った。ツバメの一般情報については付録2,3にまとめられているが、これを付録にしたのは章立てした部分でツバメの個性を強調したかったのか。映画や漫画などからの引用やダジャレも多く、理解を助けている?

 お薦め度:★★★  対象:ツバメの世界を他と比較しながら知りたい人
【森住奈穂 20211021】
●「ツバメのせかい」長谷川克著、緑書房

 『ツバメのひみつ』に続くツバメ本第二弾。前作は客観的にツバメを捉え、今作はツバメがどのように世界を感じているかを科学的に扱ったと「はじめに」に書かれている。なので聴覚や視覚の話が最初に出てくるけど、ツバメの感じ方を人間の頭で理解するのは難しい。同じ巣の兄弟が自分よりお腹が空いていると感じたら、餌乞いアピールが控えめになるというヒナの社会性、異種とのエサや巣場所をめぐる争い、渡りについてなど、面白い話題がたくさんあるのに。次作はぜひまた客観的に描いてほしいなぁ。

 お薦め度:★★★  対象:ツバメについて、いろいろたくさん知りたいひと
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