【森住奈穂 20181221】
●「土と内蔵」D・モンゴメリ一&A・ビクレ一著、築地書房
土と内臓を並べて語ることに違和感を覚えるひともいるでしょう。しかし間に微生物を挟むとどうでしょう?どちらにもたくさん住んでいて、土と内臓(消化器官)の善し悪しを決定付ける重要な役割を担っています。本書は著者の実体験(庭造りとガンへの罹患)を通して、微生物と動植物との共生関係や免疫との関わりについて、科学史の流れとともにまとめられています。肉眼では見えないし、病気の原因として長い間悪者扱いだったためか、まだまだ偏見がつきまとっている微生物。排除から共生へ、「太古からの友」の協力を仰ぐことが、農業と医療をどのように再構築するかの根本であると著者は言います。彼らが世界の生と死を司るキーパーソンであることを今後の科学は解き明かしていくのでしょう。「根は腸であり腸は根なのだ!」
お薦め度:★★★ 対象:微生物を知れば医療・農業が変わる。カラダに興味のあるひと
【六車恭子 20171020】
●「土と内蔵」D・モンゴメリ一&A・ビクレ一著、築地書房
17世紀、レ一ウェンフックが顕微鏡を発明したことがことの始まりだったかもしれません。次にパスツ一ルがその扉を開いたのです。「微生物がいなければは発酵は起こらない!」
微生物は生命に欠かせない自然の全体構想の中心をなすものだ!微生物の共生が多細胞生物のもとになったのだ。そしてその共生関係が植物の健康と土壌の肥沃さの基礎をなす。
聖書にあるイブとアダムの物語も、イブは生命をあらわすハバに由来し、アダムは土を意味するアダマに由来する。土壌の肥沃さの源は人類が農業と造園をはじめてから長い間、最も深淵な謎の一つだった。植物を構成する元素の源、大気、水、岩。大気の80%は窒素、植物は微生物の力を借りて他の元素を取り入れたのだ。
人口増加に伴って化学肥料が多用され、土壌は汚染されていった。ハワ一ドは病気にかかりやすい近代農業に触媒として微生物を用いた。ミミズなどの地下の協力者たちの複雑な働きは目を見張るものがあった。有機物を分解し、必要な栄養物を分配、供給していたのだ。
微生物こそ6億年前に海から上陸し乾いた大地に定住した生命だったのだ。植物と根圏微生物の多彩な相互作用はちょうど人の腸内細菌が働く姿に等しい!菌根が細毛で大地を探るように、人体の腸内では細毛が栄養物を選り分ける。私たちは体の中で畑を耕しているのだ。土壌の健康とヒトの健康とは根本でつながっている!私たちは生態学者の精神、園芸家の気配り、医師の技術をあわせ持つ必要があるのだ。自分の腸で庭作りをし、必要とするものを体内の奥深くで育てる庭師をめざそう!
お薦め度:★★★★ 対象:長い長いお話に耳を傾ける覚悟のある人