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本の紹介「ツシマヤマネコって、知ってる?」

「ツシマヤマネコって、知ってる?」太田京子著、岩崎書店、2010年7月、ISBN978-4-265-04288-3、1600円+税


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【萩野哲 20241004】【公開用】
●「ツシマヤマネコって、知ってる?」太田京子著、岩崎書店

 現状、ツシマヤマネコは80〜110頭しか生存しておらず、減少傾向。子供は1回に1〜3頭しか産まない。減る原因の第1は生息地の危機で、人口減少、高齢化による植林地の荒廃や田畑の減少はヤマネコの餌の減少、道路建設は生息地の分断につながっている。第2は交通事故で、年2〜5頭が遭遇しているにすぎないが、母数が少ないので深刻。第3はFIVなどの厄介な病気。第4はトラバサミ。第5はノネコ・野犬の攻撃。これらを読んで、ツシマヤマネコが決して深山幽谷ではなく、ヒトの生活圏に密着した種であることがよくわかる。第3章に保護されたヤマネコの事例がたくさん紹介されている。ヤマネコを守る活動は山、里、田、川、そして海まで!展開されている。対馬に限らず、全国6か所の動物園で繁殖や普及活動を行っている。この本が出版されてから14年。状況は改善しているだろうか。

 お薦め度:★★★  対象:ツシマヤマネコの運命が心配な人
【里井敬 20241024】
●「ツシマヤマネコって、知ってる?」太田京子著、岩崎書店

 ベンガルヤマネコが大陸から朝鮮半島経由で対馬に渡ってツシマヤマネコに、中国南部から台湾の南回りに西表に来たのがイリオモテヤマネコになった。どちらも100頭前後しか生息していない。ツシマヤマネコは交通事故・生息環境の悪化・病気・ワナ等が影響して数を減らしている。交通事故などで保護されたヤマネコの様子や守るための活動を紹介している。野生動物を守り野に返すことに賛否はあるけれど、多くの人が「ツシマヤマネコを守る」ことが、島の環境を守り子や孫のためになると考えている。
 ツシマヤマネコを野生で見るのは難しいので、動物園などで見たいと思ったけれど、関西にはないのが残念だ(注;調べてみたら、2020年に京都市動物園に来園したそうです。ただし、非公開)。

 お薦め度:★★★  対象:珍しい動物が好きな人
【冨永則子 20241024】
●「ツシマヤマネコって、知ってる?」太田京子著、岩崎書店

 日本にいる野生のヤマネコは西表島のイリオモテヤマネコと対馬にいるツシマヤマネコの2種類。イリオモテヤマネコのほうがマスコミにも取り上げられ広く知られているが、両種とも絶滅の危機に瀕している。本著ではツシマヤマネコに焦点を当て、対馬の人々が野生生物であるヤマネコとどう関わってきたか、絶滅の危機にどう向き合っているかを知ることで野生生物を守り、その生命を次世代に繋いでいく保護、保全活動の意義を伝えている。
 ツシマヤマネコは種の保全のため、現在、対馬以外に福岡、富山、横浜、東京、佐世保の動物園で飼育されている。すぐに会いたい人は動物園へ行ってみよう。

 お薦め度:★★★  対象:猫好きの人に、絶滅危惧種に興味のある人に
【西本由佳 20241021】
●「ツシマヤマネコって、知ってる?」太田京子著、岩崎書店

 ツシマヤマネコは対馬にだけ生息するヤマネコ。里山に住み、ネズミやカエルなどを食べて暮らしてきた。しかし森林の人工林化や田んぼの農薬使用などで餌となる生きものが減り、また交通事故にあうなどして数を減らしてきた。今では絶滅が危惧されている。そこで、行政や地元の人たちが今懸命な取り組みを進めている。人工林の広葉樹化、田んぼでの減農薬、交通事故を減らすためにスピードを落とすことなどの啓発、道路周りの環境改善、トラばさみの回収。また広く知ってもらうための周知活動など、効果を確かめ、課題を一つひとつクリアしながら、ツシマヤマネコと人が共存できる道を探っている。

 お薦め度:★★★  対象:ツシマヤマネコって何?という人
【森住奈穂 20241025】
●「ツシマヤマネコって、知ってる?」太田京子著、岩崎書店

 長崎県対馬に住むツシマヤマネコ。イエネコと同じくらいのサイズで、ふっといしっぽ、ひたいの縦じま、小さくて丸い耳。可愛らしい顔だ。生息数は推定約100匹。100匹しかいない!この絶滅危惧種を守るための島内外での取り組みが紹介されている。動物園もそのひとつで、全国で5ヶ所が飼育に取り組んでおられるとのこと。文中にも「見たことがないものなど守れない」という声が出てくるが、本当にその通りだと思う。本書の出版は2010年。いま調べてみると京都市動物園にもいるみたい。会いに行きたくなりました。

 お薦め度:★★★  対象:ツシマヤマネコを知らないひと
【和田岳 20241024】
●「ツシマヤマネコって、知ってる?」太田京子著、岩崎書店

 児童書を書いてきた著者が、クマの次に、人と野生動物との関わりをテーマに取り上げたのがツシマヤマネコ。2010年に書かれた本なので、現在とは違っているところもあるが、不思議なくらい状況はあまり変わらない。
 ツシマヤマネコの暮らしなどの紹介の後、約100頭しか生息していないことが述べられる。そして、減っている理由として、生息地の減少、交通事故、FIV、罠、野良猫・野犬があげられる。交通事故は大きく取り上げられているが、それは現在でも大きな問題のまま。
 後半は、ツシマヤマネコを守ろうとする人達の活動紹介。舟志の森づくり、ツシマヤマネコを守る会、田んぼの学校、佐護ヤマネコ稲作研究会、対馬動物医療センター、対馬野生生物保護センター、ツシマヤマネコ応援団。軋轢はあっても、地元にツシマヤマネコを守ろうという動きがいろいろあり、その多くは現在も活動を続けている。
 この本が書かれて14年、生息個体数はまだ約100頭だし、交通事故は起き続けているし、シカの増加による環境の変化は深刻。しかし、地元で応援してくれる人達がこれだけいるなら、ツシマヤマネコは生き延びるかもしれないと思わせてくれる。

 お薦め度:★★  対象:ツシマヤマネコが気になる人
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