友の会読書サークルBooks

本の紹介「ウイルスの進化史を考える」

「ウイルスの進化史を考える」武村政春著、技術評論社、2022年3月、ISBN978-4-2971-2773-2、2200円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【和田岳 20220826】【公開用】
●「ウイルスの進化史を考える」武村政春著、技術評論社

 ウイルス研究者(といってもDNAウイルスの)が、ウイルスの構造、分類から始まって、現時点での知見に基づいてウイルスの進化を考えた本。生物学的スタンスでの、研究対象としてのウイルスの面白さを扱っていて、ウイルス感染症、ワクチン、副反応などへの理解が深める本ではないが、コロナ禍での基礎知識として知っていて損はないかも。
 第1章は基礎知識。ウイルスの構造と生活環、大雑把な分類。そして、ウイルスが最初にどうやって出現したかについての4つの仮説。第2章はRNAウイルス、第3章はDNAウイルス、第4章はレトロウイルス。そして第5章は、ウイルスの進化の話。著者が専門とする巨大ウイルスの研究は、生物細胞の起源にもつながる可能性があって、興味深い。
 親しみやすくするためなんだろうけど、随所に口語体が混じり、しばしば関西弁。ちょっとイラッとする。

 お薦め度:★★★  対象:ウイルスってどんなもんなのか知りたい人
【萩野哲 20220804】
●「ウイルスの進化史を考える」武村政春著、技術評論社

 ウイルスは生物なのか生物ではないのか?それは人間が設定した定義によるだろう。いずれにしても、本体物質がDNAかRNA というゲノムを持っている点で「生命体」とみなせる。ウイルスの起源については、@ある種の細胞が細胞に感染・増殖するための必要最低限のものしか持たないミニマリストになり果てたもの、Aある種の細胞内に存在していた DNAかRNAだったものが偶然細胞外に飛び出し、再び古巣に戻って複製を行うようになったもの、B細胞が存在しなかった時代から存在したもの、C「ウイルス・ファースト仮説」 =地球上に最初に現れたのがウイルスで、生物はウイルスの祖先から生まれたとするもの、の4仮説があることを紹介し、更に、現存するRNAウイルス、DNA ウイルス、レトロウイルスの進化を丁寧かつ乱暴に妄想するという趣向の本。いろんなウイルスについてどんなヤツか知ることができる。というところで紹介文の紙面が尽きた。

 お薦め度:★★★  対象:新型コロナ禍が長引いて頭に来ている人
[トップページ][本の紹介][会合の記録]