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本の紹介「ウマははしる ヒトはこける」
「ウマははしる ヒトはこける 歩く・飛ぶ・泳ぐ生物学」本川達雄著、中公新書、2024年2月、ISBN978-4-12-102790-0、1000円+税
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【里井敬 20240626】【公開用】
●「ウマははしる ヒトはこける」本川達雄著、中公新書
ヒトは移動運動能力に長けた動物らしい。歩く、走るだけでなく木に登って木の実を集め、水に潜って魚を獲る事も出来る。2足で立ち上がって遠くを見通せ、体毛がないことにより効率の良い放熱効果も得られた。ヒトの2足歩行は独特だ、鳥は翼で、恐竜は尾でバランスを取りながら歩むがヒトはコケながら歩く。位置エネルギーを運動エネルギーに変えながらの省エネ歩行である。長時間の走行も可能だ。陸での移動を考えると、鳥はすごい。浮力のほとんど無い空中を翼の力だけで体を支え、推進力をつけて進む。軽量化のために歯を持つことまでやめてしまった。遮るものがないので移動に有利だ。自力で飛べる動物は種類も多い。陸の脊椎動物の3万3000種のうち鳥は3分の1を占める。哺乳類は数は少なく5100種ですが、その中で飛べるコウモリの仲間は1000種もいる。動物の運動を構造や数式を使って、詳しく解説している。
お薦め度:★★★ 対象:動物の運動能力を詳しく考えたい人
【西村寿雄 20240623】
●「ウマははしる ヒトはこける」本川達雄著、中公新書
著者の本川さんは以前にも『ゾウの時間ネズミの時間』など出されていた。今回は、「歩く・飛ぶ・泳ぐ」の動物行動に深く触れている。動物は骨と筋肉とが絶妙な働きをして動いていることがよくわかる。しばしば、「歩く」とはそういうことかと納得させられる。人がなんなく歩行できるのは、「倒立振り子モデル」が効いているという。「車輪」という項が出てくる。少々違和感があるか興味を引き立てている。鳥や魚は空気や液体の「流体力学」をたくみに使って生活している。ちょっと理詰めだがふだんの動物行動が見渡せる本である。
お薦め度:★★★ 対象:動物好き大人
【和田岳 20240627】
●「ウマははしる ヒトはこける」本川達雄著、中公新書
歩く・走る、泳ぐ、飛ぶという脊椎動物の3つの運動様式、そのメカニズムとそれを実現している体のつくりについて解説する一冊。
最初は、歩く・走るがテーマ。主に哺乳類の四肢の構造と歩様の話、そして歩行・走行の力学。二本足の例として、ヒトに加えて、恐竜と鳥も登場する。脊椎動物の歩行の進化の話として、魚からの背骨や四肢の進化も解説される。続いてのテーマは泳ぎ。推進機構は、翼、櫂、ジェット推進。高速遊泳する魚の尾びれが、翼だったとは知らなかった。最後は飛行。鳥の体の構造が解説される。叉骨がバネとして翼を動かすのをサポートしてるとは知らなかった。羽ばたき飛行と滑翔という2つの飛び方の説明は勉強になる。
間に挟まる筋肉や流体力学の章はかなり難しい。飛行の力学もかなり難しい。判らないところは読み飛ばしたらいいかも。
お薦め度:★★ 対象:脊椎動物の運動に関わる仕組みや理屈を知りたい人
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