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本の紹介「海はどうしてできたのか」

「海はどうしてできたのか 壮大なスケールの地球進化史」藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス、2013年2月、ISBN978-4-06-257804-2、820円+税


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【西村寿雄 20130617】【公開用】
●「海はどうしてできたのか」藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス

 著者は、子どもの時からの海へのあこがれを実現した海洋地球科学者である。「しんかい6500」にも何度も乗船しておられる。「海はどうしてできるのか」のテーマは、いいかえれば地球の歴史そのものである。まず、「地球創世記」の話から始まる。〈太陽系の起源〉から〈地球の誕生〉〈マグマオーシャン〉へと話は進む。そして〈海洋の誕生〉から〈生命の誕生〉へ。生命は宇宙で生まれたのか、地球で生まれたのか、興味ある話である。続いて、〈超大陸の出現〉〈海洋無酸素事件〉など、何度も生命の危機をもたらした〈海の事件史〉が続く。生物の大量絶滅については、隕石落下説に限定せず、火山活動などによる地球内部説も重視している。「将来、海はなくなってしまう」という考えもあるとのこと。地球もいつかは火星のようになるのだろうか。興味深いテーマである。

 お薦め度:★★★  対象:地球ずき、海ずき、高校生以上

【中条武司 20130626】
●「海はどうしてできたのか」藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス

 地球を地球たらしめているのは海の存在と言っても過言ではない。ではその海はどのようにできたのか、地球の歴史46億年を追いつつ、海の移り変わりを述べていく。酸素の発生やプレートテクトニクスと海の関わり、海水組成の変化、これから海と地球はどうなっていくのか、海という切り口から地球史を紐解いていく。海を鍋に例えて、様々な物質循環の話をしているのも興味深い。

 お薦め度:★★★  対象:地球史と海に興味のある人

【萩野哲 20130627】
●「海はどうしてできたのか」藤岡換太郎著、講談社ブルーバックス

 地球の成り立ちを海の成り立ちの切り口からまとめた書。太陽系形成から始まり、海の将来予測までを扱っている。全体の歴史を1年に置き換えて、様々なイベントがいつ起こったのかを解説する手法「地球カレンダー」は、地球や生命の歴史を扱った本ではよくみられるが、この本ではこれが大変効果的に利用されている(P.56にまとめ)と感じた。地球の誕生(46億年前)を1月1日とすると、海は早くも2月9日に誕生している。そして生命の誕生(2月25日)に至るまでにも、マグマオーシャンからの二酸化炭素による温室効果で液体の水が成立し、固体の地表が形成される事件が次々に起こっている。その大きさ、金星でもない火星でもない太陽からの距離など、地球は他の惑星に例を見ない偶然と必然により、豊かな生命を育んできたことを、本書は平易に語っている。

 お薦め度:★★★  対象:壮大な地球の歴史を畏敬をもって俯瞰したい人

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