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本の紹介「海の寄生・共生生物図鑑」

「海の寄生・共生生物図鑑」星野修・齋藤暢宏著・長澤和也編著、築地書館、2016年7月、ISBN978-4-8067-1517-7、1600円+税


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【森住奈穂 20170420】【公開用有】
●「海の寄生・共生生物図鑑」星野修・齋藤暢宏著・長澤和也編著、築地書館

 うわぁー。ひぇぇ。ページをめくるたび、思わず声が出そうになる。陸の寄生生物たちは宿主の外見からはわからないことが多いけれど、海は違う。魚の体表にこれでもかと(堂々と)しがみついて卵嚢をぶらさげたり、お口の中からカメラ目線を送っている。戦慄。なかには可愛いのもいる。ダンゴムシに似たニホンコツブムシや、ワッフルのように二つ折りになるというヒラタウミセミ。とにかく写真がきれいで、可愛いのにも、そうでないのにも目を奪われる。それぞれに付けられた短い説明分には、「新種」「生態不明」などの言葉が頻出。あなたの知らない世界がここに!

 お薦め度:★★★  対象:美しくもたくましい海の小さな生物の生活に触れたい人


【萩野哲 20170417】
●「海の寄生・共生生物図鑑」星野修・齋藤暢宏著・長澤和也編著、築地書館

 不気味な印象を持たれる寄生虫の印象が、本書を読む(見る)と解消すること必至である(もちろん多少は気持ち悪いけど)。魚の口からもうひとつの顔を覗かせるユーモラスなウオノエ類、魚の眼の上にひっついているカイアシ類(メダマイカリムシ類)のまるで簪のように見えるコイル状の卵嚢、ヤドリアミが背負う陣笠のようなアミヤドリムシの(両種の名前のややこしさも含めた)滑稽さなどなど。本書に示された生物は、なにも寄生・共生生物に限っておらず、海の(知らない人は)知らない、小さな生命の一部を興味深く紹介している。寄生・共生生物の複雑な生態を知ることによって、改めて種間関係の不思議を認識できる。また、生態図鑑にしたことにより、彼らの色彩的美しさも際立っている。

 お薦め度:★★★  対象:陸の風景を見慣れたひと

【和田岳 20170421】
●「海の寄生・共生生物図鑑」星野修・齋藤暢宏著・長澤和也編著、築地書館

 タイトルには寄生・共生生物とあるけれど、寄生・共生生物に限らず、伊豆大島を舞台に、ダイビングで見られる小さな動物を次々と美しい写真で紹介してくれる写真集。
 表紙の魚の口の中から眼がのぞくのは、魚の口の中に生息するウオノエ。その他に、ウミクワガタ、エビヤドリムシ、ウミケムシ、オニナナフシ、オオメアミ、ホソツツムシ、ヤドカリモドキ、コノハエビ、タナイス、クーマ、ウミノミ、イソヤムシなどなど。甲殻類を中心に、かなり生き物に詳しい人でも、聞いたことのない動物が次々と登場する。綺麗だったり,面白い形だったり、不思議な生活をしていたり、それぞれがとても興味深い。海に行くと、魚とかタコとかウニとかヒトデとか大きな動物ばかりに眼が行きがちだけど、それだけでは勿体ない。
 今度、磯観察に行ったら、小さな動物を探してみよう。

 お薦め度:★★★★  対象:海岸や海での生き物観察に行く機会のある人
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