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本の紹介「ウミショウブの花」
「ウミショウブの花」横塚眞己人著、福音館書店たくさんのふしぎ2013年8月号、667円+税
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【西村寿雄 20130918】【公開用】
●「ウミショウブの花」横塚眞己人著、福音館書店たくさんのふしぎ
場所は沖縄県西表島海岸。写真家の著者はあるとき水面に浮かぶ雪だるまのような奇妙な浮遊物に目をうばわれる。これが、ウミショウブという海草(ウミクサ)の雄花だと教えられる。この雄花はいったいどこから来たのか、どのような旅をするのか、どのようにして雌花にたどりつくのか、そしてどんな種を実らせるのか、著者の追跡が始まる。その過程が美しい写真で紹介されていく。ウミショウブの花は月に一度の大潮干潮時にのみ咲くという。海水面の変化をたくみに利用しながら、水面で静かに命をつないでいる神秘的な植物に見とれてしまう。月に一度のチャンスを忘れずたくみに命の受け渡しをしている植物に乾杯。
謎解きをしているように読者もついつい引き込まれる。著者の感動が伝わってくる。
お薦め度:★★★★ 対象:海に咲く花に興味のある小学生から
【岩坪幸子 20130912】
●「ウミショウブの花」横塚眞己人著、福音館書店たくさんのふしぎ
この本は福音館書店の月刊誌「たくさんのふしぎ」の今年(2013年)の8月号として出された子ども向けの本である。子ども向けといっても中味は実に興味深い。見たことも聞いたこともない南の島の海岸で見つけた白い粒々。「これは何だ?」と不思議に思った写真家が継続して写真を撮りながら解き明かしていく。元々陸の植物であったウミショウブが海岸の浅瀬に生きることを選び、海の中でも花を咲かせ実を結び種によって子孫を残すために、潮の干満を利用して雄花と雌花を出会わせるという戦略の見事さ。大潮の日が何故分かるのか興味は尽きない。
お薦め度:★★★★ 対象:植物好きの子どもから大人まで
【釋智恵子 20131024】
●「ウミショウブの花」横塚眞己人著、福音館書店たくさんのふしぎ
行儀よく並んだ雪だるま。表紙からなんだかかわいい様子です。これは沖縄の海にあるウミショウブという海草の雄花です。大きさは米粒ぐらい。小さな小さな花です。水中にある雄株から泡とともに水面に上がると、雪だるまに変身し、雌花にたどり着くまで、風に吹かれて移動します。雌花にたどりついた後は・・・。種ができて芽生えるまでも不思議がいっぱい。「これは何?」「どこからやってきたの?」「じゃあ、雌花はどんなの?」「種はどんなの?どこにある?」と、この写真を撮った作者の素朴な疑問が、読者をウミショウブの世界へと連れていきます。1つの物を大切に丁寧に扱っていて、好感が持てます。
お薦め度:★★★★ 対象:写真絵本が好きな人に
【冨永則子 20130821】
●「ウミショウブの花」横塚眞己人著、福音館書店たくさんのふしぎ
梅雨の明けた7月。著者は沖縄県の西表島の海岸で、海の色が白い絵の具をこぼしたように染まっている景色に出会う。まるで雪が積もったように見えたものは、米つぶくらいの大きさの雪だるまのようなもの。その正体は“ウミショウブ”という海の中に生える植物の雄花だった。海の植物といえば、ワカメやコンブのような海藻が思い浮かぶが、“ウミショウブ”は海草(ウミクサ)とよばれ、その暮らしは陸上の植物と同様に、花を咲かせ、実を結び、種を作って子孫を残していく。
本書は、潮が引いてから満ちるまでの短い時間にくり広げられる“ウミショウブ”の姿をとらえた観察記録。時間の経過を追った写真の構成は、作者と同じ視点で観察している気分になれる。
お薦め度:★★★ 対象:海の植物に関心のある人に、南の島に行ってみたい人に
【和田岳 20131019】
●「ウミショウブの花」横塚眞己人著、福音館書店たくさんのふしぎ
7月の西表島、砂浜に打ち寄せる白いツブツブ。近付いてよく見ると、水面に立ってる、小さな白いだるま。これは何だろう? 出だしからワクワクする。
水中で咲き、水面に浮かぶウミショウブの雄花。水中で咲き、潮が引くにつれて水面に出る雌花。水面の雌花に、雄花が風や波で集まってきて、潮が満ちるにつれて、雄花を中に、雌花が閉じて行く。そして結実。水面に浮かび、一定時間が立てば沈む種子。そして芽生え。
ウミショウブの不思議な送授粉や種子散布が、写真で分かりやすく紹介される。プーっと雄花が水面に向かって行く最後の写真、表紙の水面に浮かんだ雄花の写真。共に印象的で、とても美しい。
お薦め度:★★★★ 対象:不思議な生き物が好きなら
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