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本の紹介「海と湖の貧栄養化問題」

「海と湖の貧栄養化問題 水清ければ魚棲まず」山本民次・花里孝幸編著、地人書館、2015年3月、ISBN978-4-8052-0885-4、2400円+税


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【和田岳 20151030】【公開用】
●「海と湖の貧栄養化問題」山本民次・花里孝幸編著、地人書館

 諏訪湖、琵琶湖、瀬戸内海。いずれも一時期富栄養化が大きな問題となった水域。ところが今度は、貧栄養化が問題となっている。
 富栄養化という語はすっかり市民権を得て、下水の整備や水質規制、無リン洗剤の普及など、さまざまな対策が行われたおかげで、陸域から湖や海に入る河川水からリンや窒素などの栄養塩類は随分取り除かれた。富栄養化問題は解決したかのように見えた。ところが、その結果なにが起きたかというと、漁獲高が減少し、養殖ノリが色落ち。
 そして気づいたのは、栄養塩類は多すぎてもダメだが、少なすぎるのもまずいということ。まあ当たり前だけど、それをデータで示した感じ。

 お薦め度:★★★  対象:富栄養化問題に興味のある人

【中条武司 20151028】
●「海と湖の貧栄養化問題」山本民次・花里孝幸編著、地人書館

 高度経済成長期、公害や水質汚濁が問題となった頃、各地で環境基準や水質総量規制が行われた。それを進めていった結果、水はきれいになったが、栄養塩が不足し、様々な海域・湖面での漁獲高の減少につながった。琵琶湖や諏訪湖、瀬戸内海、そして海外の事例から、この貧栄養問題を紹介し、一律的な規制は改めるべきだと訴える。主張がどうしても漁獲ベースになってしまうのと、水質だけでなく海岸線や流域の変化との関係がどうなっているのが知りたいが、湖や瀬戸内海の水質問題について再考をさせられる。

 お薦め度:★★  対象:海や湖の水質が気になる人

【村山涼二 20150825】
●「海と湖の貧栄養化問題」山本民次・花里孝幸編著、地人書館

 戦後の高度経済成長に伴い、BOD,COD、窒素、リンなどが水域に排出され沿岸の海や湖沼は富栄養化し、アオコや赤潮が発生した。これを防ぐために、水質汚濁防止法、瀬戸内海環境保全臨時措置法など法規制により、COD,リン、窒素などが最終的には総量規制され、下水処理場の設置・能力向上、合成洗剤の無リン化など対策が効を奏し、赤潮の発生は殆ど無くなり、透明度も上昇し水質は良好になった。一方、各地で、漁獲量は減少、ノリの色落ちが見られ、その原因が水中の栄養塩の不足であることが明らかになり、貧栄養化問題として指摘されている。2003年頃より、貧栄養化と漁業問題に関する研究が全国の海や湖沼で進められてきた。その結果、リンや窒素も適当な濃度であれば漁業にプラスとなり、澄んだ海と漁業は両立しないことが明らかになってきた。「水清ければ魚棲まず」である。諏訪湖のワカサギ、琵琶湖のシジミ、コイ、モロコ、瀬戸内海東部のイカナゴの減少、ノリの色落ちなど被害が顕著に現れている.主な原因は貧栄養化であり、栄養源の改善により漁獲量に改善も見られている.漁獲量の減少の原因は、貧栄養化だけではなく、湖岸、河岸、海岸の埋め立て、人工護岸、改修、その他(琵琶湖では内湖干拓、遡上阻害、外来魚による在来魚の捕食など)において、生物の生態系保全に十分な配慮がなされていなかった事も原因と考えられている。水質規制政策より、豊かな海や湖を目指し、生態系の保全・再生への移行を提言している。

 お薦め度:★★★  対象:環境と漁業に関心のある方

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