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本の紹介「ウナギ」
「ウナギ 地球環境を語る魚」井田徹治著、岩波新書、2007年8月、ISBN978-4-00-431090-7、740円+税
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【和田岳 20080220】【公開用】
●「ウナギ」井田徹治著、岩波新書
ウナギの蒲焼きはうまい。そういえば、昔は高かったウナギが、近頃はけっこうスーパーで安く売っていてありがたいな。と思っていたのだが、それをありがたがっていてはいけないという事がわかる本。
我々がスーパーで気軽にウナギを買って食べるために、ヨーロッパのウナギは絶滅の危機に瀕し、アメリカのウナギも減少の一途。日本でも野生のウナギは極めて少なくなってしまった。すべて養殖用のシラスウナギを大量捕獲するため。
ウナギは、大洋の海底で生まれ、黒潮にのって、日本の河口にたどりつき、河川を上って、里山周辺で育ち、再び海へ戻るという、広い範囲を動き回って一生をまっとうする。さまざまな環境が良好に維持されてはじめて、我々はおいしいウナギを食べ続けていくことができるのだ。
お薦め度:★★★★ 対象:ウナギ好き、とくにこれからもウナギを食べ続けたいと思う人
【魚住敏治 20080221】
●「ウナギ」井田徹治著、岩波新書
ウナギといえば料理の食材というイメージしかなく、ウナギそのものについて考えたことがないという方は一度この本を読んでみて下さい。もっともこの本も食糧資源という観点から書かれてはいるのですが…。
文章構成は、生態面からウナギがいかにレプトセファルスからシラスウナギへ、そして親ウナギになり、産卵場所に向かうのか、明らかにされている範囲内で簡潔に述べられ、さらに人工養殖の現状と問題点について言及し、自然環境の悪化や人間の経済活動がいかにウナギの全世界的な減少をもたらしているかと続いていきます。
それぞれの章が有機的に結びついていて、取材によってのみ書かれたものでしょうが、非常に理解しやすい内容になっています。世界一ウナギを食べている日本人としては、一読一考しても良いかもしれません。
お薦め度:★★★ 対象:ウナギというタイトルに興味をもった方
【萩野哲 20080222】
●「ウナギ」井田徹治著、岩波新書
ウナギの情報が増えている。長い間謎であったニホンウナギの産卵場所が特定された、まだ産業的には程遠いものの、人工孵化技術も進歩し、仔魚の餌も探索されつつある、等々。一方で、世界的にウナギ属の魚の減少が深刻である。日本へのウナギ輸出No.1の中国に欧州からのウナギ種苗の供給がストップする事態が起こり、かつ、不信感が拡がると今後今のようにウナギを賞味できるかどうかわからないが、“ウナギの現状”を知るのに便利な一冊である。
お薦め度:★★★ 対象:「ウナギ」を真剣に食べたい人
【西川裕子 20071222】
●「ウナギ」井田徹治著、岩波新書
全世界のウナギの消費は日本が70%を占めています。ウナギの赤ちゃんはウナギとは似ても似つかぬ姿で海をただよっているって知っていますか?
自然の状態で卵を抱いているメスを、まだ誰も見たことがないって知っていますか? 養殖はされていても、幼魚の仕入れは自然に頼るしか出来ないって知っていますか?
漁獲によって幼魚の9割が捕らえられるって知っていますか? そして、ヨーロッパでは絶滅危惧種となっていることを知っていますか?
大人になるのに7〜8年かかり、あらゆる意味で環境汚染の影響を受け、まだ解明されていない生態も含めて、保護の進まない魚。コンビニやスーパーで安く手に入るウナギ。
こんなにも身近にある魚なのに、こんなにもわからないことの多い魚だとは思ってもみなかった。
お薦め度:★★★★ 対象:ここ数年でウナギを食べる回数が増えた人
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