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本の紹介「うれし、たのし、ウミウシ。」
「うれし、たのし、ウミウシ。」中嶋康裕著、岩波科学ライブラリー、2015年7月、ISBN978-4-00-029640-3、1300円+税
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【冨永則子 20151028】【公開用】
●「うれし、たのし、ウミウシ。」中嶋康裕著、岩波科学ライブラリー
本著は雑誌『科学』(岩波書店)などに連載されたエッセイをまとめたもの。さまざまな動物の行動を進化生物学あるいは行動生態学の視点から、どう理解できるのかについて考察した内容が中心になっている。全体的な流れはないが、読み切りのエッセイなので読みやすい。ただ、“ウミウシ!”を期待して手にとった人には不満が残るだろう。著者が訪問した各地の博物館・水族館の紹介は、生態学者としての視点で考察がされていて興味深かった。
お薦め度:★★ 対象:理系の大学教授の生態に興味がある人に
【萩野哲 20151028】
●「うれし、たのし、ウミウシ。」中嶋康裕著、岩波科学ライブラリー
本書は雑誌「科学」に連載された文章を集めたもので、各章ごとの連続性は小さいが、全体として著者の研究の軌跡が辿られており、特に著者が興味を持っているテーマであるオスとメスの関係(対立?)が語られている。タイトルにもなっているウミウシはその研究対象の一部であり、繁殖の際の損得感情を考えると共食いはなぜ起こるのか、といったような話題がでてくる。しかし各々のお話は結構専門的であり、断片的であるので、かなり周辺の知識がないと読んでも楽しくないかも…。
お薦め度:★★ 対象:オスとメスの関係について予備知識があり、更に周辺知識を知りたい人
【六車恭子 20151030】
●「うれし、たのし、ウミウシ。」中嶋康裕著、岩波科学ライブラリー
前半の2章はまさに「ウミウシ」の知られざる知見の数々にであえる場所。残り4編はウミウシ研究者の交友録や長年の学会活動で見聞した面白い話や実践録になっている。毎年場所を変えて行われる学会も「うれし、たのし」現場なのだろうか。挿入されたイラストも優しい気持にしてくれそう。
お薦め度:★★ 対象:海の生き物大好きな人
【森住奈穂 20151030】
●「うれし、たのし、ウミウシ。」中嶋康裕著、岩波科学ライブラリー
本書は、雑誌『科学』掲載されたエッセイを、著者自ら選び、まとめたもの。タイトルにウミウシとあるが、ウミウシが話題の中心のものは全体の2割ほどで、生物の性や繁殖戦略を研究する著者ならではの考察が、海の生きものから人間、さらには博物館、水族館にまで展開される。臨界実習を扱った回などで、環境変化について触れられているのだが、それが連載当時(2005年-)のことだから、現在どうなっているのか、加筆されたものが読みたかった。全25編がそれぞれ5ページほどの読み切りで、どこからでも読めるし、ご家族がイラストを担当されていることも、ほっこりできるところ。
お薦め度:★★ 対象:潮の香りに魅かれるひと
【和田岳 20151030】
●「うれし、たのし、ウミウシ。」中嶋康裕著、岩波科学ライブラリー
著者は、京都大学の臨海実験所で院生時代、テッポウエビを調べてた。その後、珊瑚礁の魚の研究に転身して就職。それが、今度はウミウシに?! と思って読み始めた。『科学』(岩波書店)の連載からセレクトしてまとめたエッセイ集。
第1章「使い捨てペニス」は、ウミウシやヒラムシのペニスの話。第2章「雌と雄の対立」は、雌雄同体や贈り物、交尾の話。第3章「海の動物たち」は、ラッコ、ペンギン、シーラカンスの軽い話題が並ぶ。第4章「消えたサンゴ礁」は、一転して沖縄島周辺のサンゴ礁の減少の話が中心。第5章「夢に見た臨海実習」は、タイトル通り臨海実習の話。第6章「博物館の光と陰」は、気になるタイトル。自然史系博物館に関するコメントだけを拾うと、もっと標本の価値がわかる説明が欲しい、もっと最新科学の成果を取り入れた解説をってことらしい。解説しすぎ、いったい誰が読むねん、とか言われている身としては、不思議な感じがする。
お薦め度:★★ 対象:なんか海の生き物が好きなら
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