【萩野哲 20180425】【公開用】
●「うつも肥満も腸内細菌に訊け!」小澤祥司著、岩波科学ライブラリー
いきなり「guts」。昔の人は腸=はらわたが感情や思考を制御していると考えた。非科学的と思われたこの考えも、腸管神経系の複雑さや脳との連携、さらには腸内細菌叢との連携の重要性がわかってきて復活した。そう、腸は根性だけではないのだ。確かに発生上は腸の方が脳より早いしね。抗菌剤で牛が太る機構も、腸内細菌叢にディスバイオシスを起こして肥満を制御できなくなるからだと考えると、よく理解できる。腸内細菌叢と心身の病気との関連が深いこともわかってきた。現代文明から隔絶された部族の腸内細菌叢は文明人よりも多様性が高いらしい。現代文明は便利な生活を得るのと引き換えに大きな代償を支払っているのではなかろうか?
お薦め度:★★★ 対象:自分の健康が心配な人
【西村寿雄 20180423】
●「うつも肥満も腸内細菌に訊け!」小澤祥司著、岩波科学ライブラリー
人間も含めて動物の腸内には多種多様な細菌が棲んでいる。私たち人間の腸内には種類にして1000以上、数にして100兆から1000兆個の細菌が生息している。水分を除く大便の重さの半分は腸内細菌とその死骸だとか。近年の探索技術の進展で今までわからなかった多様な細菌が人間の健康に大きな影響を及ぼしていることが分かってきた。この本はそうした腸内細菌が働いている人体と病気との関連について詳細に書かれている。日常の食生活の中では多様な腸内細菌を維持していく食事が望まれる。不用意に抗菌剤を使用することへの警鐘もある。体調が思わしくない人や肥満やがんなどを気になる人には一読の価値はある。細かな記述の部分は適当に読み飛ばせばいいだろう。
お薦め度:★★★ 対象:体調管理を気にする人
【六車恭子 20180629】
●「うつも肥満も腸内細菌に訊け!」小澤祥司著、岩波科学ライブラリー
私たちの腸内細菌叢は人類が食べてきたもの、そしていま食べているもの双方に由来する。
文明が進むにつれいま私たちを蝕む病は複雑さを極め、腸内細菌を解明することが緊要だという。まずこの世界には腸があった!人類にも進化の道筋で常に寄り添ってきた腸内細菌という伴奏者がいたのだ!
新生児の腸内細菌は産道を通過するとき、母親から受け取り、いわばそこには私たちの来歴が反映されている。
近年増加している「現代病」や「先進国病」などとよばれる疾病は細菌叢の乱れからとも考えられる。脳になりそこねた器官、腸は細菌軸の発見で新しい解明と発展が期待される分野にちがいない。
お薦め度:★★★★ 対象:自らの食生活を見直そうと思っている方