【中条武司 20180425】【公開用】
●「我々はなぜ我々だけなのか」川端裕人著、講談社ブルーバックス
人類進化の舞台といえばアフリカ大陸。いやいや、アジアでも様々なホモ属の進化の舞台となっており、それが人類進化の様々な鍵を解くものになるかもしれない。ジャワ原人と一括りにできない進化、サピエンスより前に海を渡ったフローレンス原人、分厚いあごを持った澎湖人など、アジアは人類学にとって謎に満ちた熱いフィールドであることがわかる。問題はこの本だけでは人類進化の全般は見通せないので、アフリカ大陸の人類についても学ばないといけないところか。でも、やっぱり1つの保存の良い化石がでるだけでがらりと学説が変わる人類学って、リスキーな学問だと思う。
お薦め度:★★★ 対象:人類学の潮流を知るために
【萩野哲 20180425】
●「我々はなぜ我々だけなのか」川端裕人著、講談社ブルーバックス
最新のヒトの系図を俯瞰しつつ、アジアのエレクトスに焦点を当てた書。1891年にジャワ島で最初のエレクトス(ジャワ原人)が発見されて以来、この種はアフリカで誕生し、世界中に広がったことがわかってきた。北京原人もこの種に含まれるとされた。しかし、アフリカが人類誕生の中心との理解の一方、最初のエレクトス発見の地ジャワやその周りでもその後多数の同種の標本が見つかっているのだ。最新技術の進歩により、脳容積等が以前よりはるかに正確に測定できるようになり、いろいろな人類との関係がより深く考察・再考されてきつつある。タイトルの答えはまだ得られていないが、それが期待できる状況が揃いつつあるようだ。
お薦め度:★★★ 対象:我々人類の起源や人類達の関係の謎に迫りたい人
【和田岳 20180427】
●「我々はなぜ我々だけなのか」川端裕人著、講談社ブルーバックス
人類化石といえばアフリカが本場。とくに猿人などの古い時代の人類化石では今もアフリカが独壇場。しかし近年、アジアでも比較的新しい時代のさまざまな人類化石が発掘され、アジアにさまざまな原人(Homo erec-tus)が暮らしていたことが明らかになってきています。このジャワ原人、フローレス原人、澎湖人などの発掘・研究では、日本の国立科学博物館のチームが重要な役割を演じてきました。
作家でありサイエンスライターでもある著者が、国立科学博物館のチームに取材し、監修を受けつつアジアの化石人類の多様性を、最新の情報をもとに紹介した一冊。ジャワ島のジャワ原人発掘現場や、フローレス島のフローレス原人が見つかった洞窟や、国立科学博物館の海部研究室に取材に行き、そこでのエピソード、研究者とのやりとりを交えつつ、原人の化石の画像も交えつつ、ジャワ原人やフローレス原人の研究史を紹介。そして、かつては多様だった東アジアの人類世界の一端を描き出してくれます。
お薦め度:★★★★ 対象:アジアの人類の歴史に興味のある人