友の会読書サークルBooks

本の紹介「渡りの足跡」

「渡りの足跡」梨木香歩著、新潮文庫、2013年2月、ISBN978-4-10-125340-4、490円+税


【注意】本の紹介は、それぞれの紹介者が自らの判断によって行なっています。他の人からの意見を取り入れて、変更をする場合もありますが、あくまでも紹介文は紹介者個人の著作物であり、サークル全体や友の会、あるいは博物館の意見ではないことをお断りしておきます。
 もし紹介文についてご意見などありましたら、運営責任者の一人である和田(wadat@omnh.jp)までご連絡下さい。
[トップページ][本の紹介][会合の記録]

【冨永則子 20210103】
●「渡りの足跡」梨木香歩著、新潮文庫

 オジロワシやオオワシ、ワタリガラスなど北の空を渡る鳥たちの「渡り」を追って、知床、諏訪湖、カムチャッカへと旅する“ネイチャーライティング作品”。ネイチャーライティングとは、一般的に「自然を主題とするノンフィクション・エッセイ」。自然科学系の文章との違いは、書き手の主観的な反応が重ね書きされる点にある。そこには自然科学的客観性と作者の主観性が二つながらに在り、かつ縒り合わされる世界に“ネイチャーライティング”というジャンルの本質と展性が隠れている…らしい。いろんな“ジャンル”があるものだ。なるほど、鳥たちの行動描写の多くが擬人化され、あたかも真実のように伝わってくる。描写の上手さは作家ならではか? 作者自身も、芸能人のゴシップ報道には眉をひそめるのに、目の前の鳥の身の上を空想していると呆れている。エピソードとして語られる「ノー・ノー・ボーイ」や「知床開拓」の方に、より興味が湧いた。

 お薦め度:★★★  対象:北の国を渡る鳥たちに興味がある人に
[トップページ][本の紹介][会合の記録]