【西本由佳 20171015】
●「ウェゲナ一の大陸移動説は仮説実験の勝利」西村寿雄著、文芸社
それまで誰も言っていなかったことを言うのは楽じゃない。研究にオリジナリティは不可欠だけど、誰かがやったことを少し発展させてみて、たくさんの確からしい説のなかで、わずかばかりの未知のすきまを埋めるのがふつうだ。ウェゲナーは専門外の立場から、大陸移動説を唱え始めた。それを支えた自信はどこからきたのだろう、という疑問の答えが、この本にある。ウェゲナーがいきなり唱えたように見える大陸移動説だが、それにつながる、科学的に検証された証拠はすでに用意されていた。それらのいろんな分野にまたがる説を使ってていねいに仮説を検討したことが、大陸移動説を支えた。新説といっても、それはふつうに科学の方法を積み上げた地道な成果だったのであって、少しも突飛なことではなかったのだなと納得した。
お薦め度:★★★ 対象:科学の考え方について知りたい人
【六車恭子 20170616】
●「ウェゲナ一の大陸移動説は仮説実験の勝利」西村寿雄著、文芸社
ウェゲナ一の大陸移動説はともすると無味乾燥になりやすい博物的な地質学から地球科学へと私たちの目を向けさせてくれた記念碑的書物だったとし、その後、著者自身も独自の仮説実験授業を推進した経緯をおもちだ。
早すぎるひとつの学説が時代の中で不動の位置を築くまでの経緯が丁寧に纏められている。ウェゲナ一が地質学者でなく、気象専門の地球物理学者だったことも幸いしたのだろうか。ウェゲナ一の研究法には科学の目があったと讃える。実に多くの
<検証した事象>
を丁寧に積み重ねていったのだ!そして、調査に行ったグリーンランドでの訃報、大陸移動説の殉教者のようにも思える。しかし悲劇的というより、職人魂をみるようで心が暖かくなるのは不思議だ。
お薦め度:★★★★ 対象:地球の成り立ちに挑戦した人々に触れてみたい人