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本の紹介「ウォンバットのうんちはなぜ、四角いのか?」

「ウォンバットのうんちはなぜ、四角いのか? とあるウォンバット研究者の数奇な人生」高野光太郎著、晶文社、2022年10月、ISBN978-4-7949-7328-3、1600円+税


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【冨永則子 20221221】【公開用】
●「ウォンバットのうんちはなぜ、四角いのか?」高野光太郎著、晶文社

 ウォンバット…知ってますか? 大阪の池田市にある五月山動物園には、30歳になる世界最高齢のウォンバットがいるんですよ。ギネス記録保持者です。とは言え、私も、なんとなく大きなモルモット?ぐらいに思っていました。ウォンバットはコアラやカンガルーと同じ有袋類。しかし、そんなウォンバットを知るために特化した書籍が日本にはない! そこで、オーストラリアの地でウォンバットを研究している若き研究者が日本初のウォンバット本を書きました。ウォンバットのことを知るだけでなく、オーストラリアで、いや世界中で直面している人間と自然との関わりについても考えさせられる一冊です。まだまだ20代の研究者が辿った進路選択も、ここ数年のことなので非常にリアリティに溢れ、今まさに進路に悩む人達にも響くのではないでしょうか? 自分の“落ちこぼれ”具合を受け入れ、だからこそ自分に出来ることが見えてくる。どんな人にも“数奇な人生”は待ち受けているんです。

 お薦め度:★★★  対象:四角いうんちの謎を知りたい人は是非!
【萩野哲 20230120】
●「ウォンバットのうんちはなぜ、四角いのか?」高野光太郎著、晶文社

 ウォンバット。30日ほどの妊娠期間で生まれ、母親の後ろ向きの袋の中で6〜10か月を過ごし、2歳までに親離れする有袋類。硬い草を食べるため、門歯は一生伸び続け、消化管は長く、消化に要する時間は極めて長い。野生では15年程度の寿命。3種が認められている。タイトルにもなっている四角いうんちは、水を飲まないため水分含量の低い消化管内容物が場所によって硬さが違う消化管を通過するうちに形成されるようで、この事実を解明した研究は2019年度のイグ・ノーベル賞を受賞したそうだ。ウォンバットなどの有袋類に対するいろいろな厄災の中で、疥癬やクラミジアなどの寄生虫やその他の感染症が大問題。著者は現在、フィールドや研究室でこれらの駆除に携わっている。効果のある方法を突き止めても、用法容量を守らない人がいるのも悩みの種だ。

 お薦め度:★★★  対象:オーストラリアの動物に興味がある人、または、人生の様々なレールを参考にしたい若い人
【森住奈穂 20230223】
●「ウォンバットのうんちはなぜ、四角いのか?」高野光太郎著、晶文社

 有袋類、否、生きもののなかでも屈指の可愛らしさ(主観)を誇るウォンバット。なのに知名度はいささか低め、同じオーストラリアに暮らすコアラやカンガルーに比べると、二軍感も否めない。日本初のウォンバット本を書いた著者は、タスマニア大学留学時代に偶然ウォンバット研究に出会い、紆余曲折を経て現在研究者としての道を歩んでいる。ヒゼンダニによる感染症に苦しむウォンバットを救うべく、現地ではさまざまな取組みが進行中で保全活動が盛んであるそう。頑張ってほしい。第4章には他のオーストラリアの生きものたちが紹介されており、タスマニアデビルが一度に20〜30頭も出産する話に驚いた。数を減らしているのは皆同じ。考えさせられる。

 お薦め度:★★★  対象:オーストラリアの生きものに関心のあるひと
【和田岳 20230204】
●「ウォンバットのうんちはなぜ、四角いのか?」高野光太郎著、晶文社

 動物好きの少年が、なぜかオーストラリアの大学に進学し動物学を専攻。ふとしたきっかけでウォンバット調査に参加したことをきっかけに、ウォンバットを病気から守るための研究に関わっていく。
 疥癬で苦しむウォンバットを救うために、薬を使いたい。その安全性確認のための研究が進められている一方で、勝手に薬を投与しようとする保護団体。目的は同じなのに、なぜか確執が生まれる構図。どこか新型コロナウイルスのワクチンについての議論にも通じる。
 最終章では保全の話が取り上げられるが、著者の感覚はオーストラリアの哺乳類(とくにウォンバット)へのバイアスが高すぎて、日本から見ると不思議な感じがする。

 お薦め度:★★  対象:オーストラリアの哺乳類がかかえる問題の一端を知りたい人
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